難民危機で台頭しウイルス危機に敗れたドイツ極右
Coronavirus Has Paralyzed Europe’s Far Right
ヒリエはAfDのソーシャルメディアに関する統計値をコロナウイルス大流行が始まる前の3週間と、始まった後の3週間で比較し、AfDの投稿に対する反応が通常の半分に減っていることを発見した。さらに、ウイルス危機自体に関するAfDの投稿には、支持者からの「いいね」やシェア、コメントが少ないことわかった。
一方、メルケル首相の着実で実際的な存在感は、ドイツ人が今まさに求めているもののようだ。ドイツの放送局ZDFが発表した調査では、回答者の80%がメルケルの危機への対応を支持し、さらに88%がこの間の政府の活動を支持した。
その結果、メルケル首相の与党CDUは、全国世論調査で確実な地歩を回復したが、AfDへの支持は10%を割り込んだ。
だがこうした極右勢力は、一時的に人気を失っても、ウイルスの脅威が後退すれば再び勢力を盛り返すだろう。人々の関心が、ウイルスがもたらした経済的な破壊に向くようになれば、極右は、より貧しく被害が大きい国々に対するEU支援をどうするか、という難しい問題に飛びつくだろう。
イタリアの極右政党「同盟」のマッテオ・サルビーニ党首の狙いはまさにそこだ。イタリアで感染爆発と医療崩壊が起きた当初、欧州の隣人たちからは支援も連帯もなかったと主張する。これに対してドイツなど裕福な欧州北部の国々では、ユーロ危機の時と同じ不満が吹き出すに違いない。なぜ南欧諸国に支援をしなければならないのか、と。2013年にAfDが生まれたのも、こうした反ユーロ感情が渦巻いている時だった。
「今はAfDに出番はないが、2カ月もすればまた出てくるだろう」と、キール大学安全保障研究所の政治学者、マルセル・ディルサスは言う。「ドイツが他の欧州諸国を支援する時、彼らは難癖をつけて利用するために待ち構えているはずだ」
2020年4月21日号(4月14日発売)は「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集。働き方改革は失敗だった? コロナ禍の在宅勤務が突き付ける課題。なぜ日本は休めない病なのか――。ほか「欧州封鎖解除は時期尚早」など新型コロナ関連記事も多数掲載。