最新記事

感染症対策

英米メディアが絶賛、ニュージーランドが新型コロナウイルスを抑え込んでいる理由とは

2020年4月13日(月)15時30分
松丸さとみ

NZ首相は「危機時におけるコミュニケーションのお手本」と評価されている......The Telegraph-YouTube

<コルナウイルス抑え込みの成功例としてニュージーランドが注目されている。首相の対応は「危機時におけるコミュニケーションのお手本」だと評価されている......>

入国規制、経済対策など迅速な対応

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大を抑えようと各国が苦労する中、ニュージーランドの取り組みに注目が集まっている。

ニュージーランドは4月13日午後1時(現地時間)現在、感染者数1349人(未確定を含む)、入院者数15人、死者数5人となっている。同国の人口は500万人弱。

英米のメディアは、ニュージーランドで新型コロナウイルスの感染拡大が抑えられている理由は、その「独特な取り組み」にあるとして、ジェシンダ・アーダーン首相の指導力を絶賛している。米ワシントン・ポスト紙は、他国が感染症を「抑制」しようとしている中、ニュージーランドは「排除」しようとしている、と描写した。

ニュージーランドの取り組みで特徴的なのはまず、対応が早かったことだ。2月3日の時点で、外国籍の人全員を対象に、中国からのフライト(トランジットを含む)での入国を禁止した。ニュージーランド国籍を持つ人や永住権を持つ人、その家族は入国が許されたが、14日間の自主隔離が求められた。

2月28日に同国初の感染者が確認されると、すぐに入国禁止対象国を拡大。さらに3月19日には、自国民や永住権保有者以外は、全世界どの国からも入国を禁止とした。ニュージーランドは、海外からの観光客数が年間で390万人に達する観光大国ではあるが、決断は早かった。

また、全面的な入国禁止に先立ち3月17日、感染予防策による経済的打撃への対抗策として、ニュージーランドGDPの4%に相当する121億NZドル(8000億円弱)規模の経済対策を打ち出した。

ニュージーランド屈指の伝染病学者である、オタゴ大学のマイケル・ベイカー教授はワシントン・ポスト紙に対し、「毅然とした態度で脅威に対峙した」とアーダーン首相を評価。同教授はさらに、他国が段階的に手を打つ中、ニュージーランドの対応はその真逆だったと指摘した。

指導力の高さで高支持率

もう一つ特徴的なのは、アーダーン首相のコミュニケーション力と指導力の高さだ。ニュージーランドが「鎖国状態」に入った翌日の3月20日、アーダーン首相は官邸からテレビ・メッセージで、国民に語りかけた。ニュージーランドで首相が官邸からテレビで国民に呼びかけるのは、1982年以来初めてだったという。

Prime Minister Jacinda Ardern statement to the nation on Covid-19, March 21
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、3月6日に臨時首脳会議開催 防衛強化やウクラ

ワールド

米ロ、今週末にも当局者会合実施へ 関係改善を協議

ワールド

米、ウクライナ鉱物資源巡り今週中に合意の見通し=高

ワールド

ゼレンスキー氏「平和実現なら辞任の用意」、NATO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 2
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 10
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中