新型コロナ緊急事態宣言で何が変わるか──「ロックダウン」とはどういうものか
他方、「食品、医薬品、医療機器その他の衛生用品、再生医療等製品又は燃料その他生活に欠くことができない物品として厚生労働大臣が定めるものの売り場」は明文で閉鎖要請・指示の対象から外れている(施行令第11条第7号かっこ書き)ので、食料品店や薬局などが行政の要請・指示によって閉まるということはない。また、飲食店や床面積1000m2以下の物販店も閉鎖要請・指示対象とはなっていない。この観点からは、日常生活に大きく支障をきたすということはないだろう。
むしろ、電気・ガス・水道等のインフラの維持(法52条)、医療提供体制の維持(法47条)、運送・通信等の維持(法第53条)に加え、食品や生活必需品の供給、あるいは金融機能といったような生活維持に必要な業務が途絶えることのないような対応が求められる。したがって、業種ごとに異なるとは考えられるが、今後、仮に、緊急事態宣言に基づく外出自粛要請が出されたとしても、一律に会社への出勤停止ということにはならない。それぞれの会社において、出勤が必須となる業務とそうでない業務に分け、出勤する人は感染しないよう特段の注意を払いながら出勤・業務運営を続けるということになると思われる。また、学校や保育所、ショートステイの高齢者施設等が閉鎖されることがありうるため、家族の世話の必要から、出勤に支障が生ずる社員への配慮も求められよう。
ところで、先の研究員の眼でもふれたように、緊急事態宣言の眼目は医療提供体制の維持である。この観点から、緊急事態宣言下で特に重要と考えられるのが、臨時の医療施設開設のための土地・家屋等の使用である(法第49条)。まずは所有者等の同意を得る必要がある(第1項)が、所有者等が正当な理由がないのに同意をしないときは、同意がなくとも土地・家屋等を使用することができる(第2項)。
報道では、地域によっては病院のベッドのキャパシティの上限が近づいているとのことである。病院への入院は重症者に限定し、比較的軽症の患者は臨時の医療施設に収容するなど、リソースの配分を考えていく必要がある2。行政には、営業を休止したホテルや最近廃校となった学校などを病院に転用できないか、早すぎると思われる段階から調整を行っておく必要があろう。
なお、営業自粛や催し物の中止による損失補償については、法は何も定めていない。補償されるのは、検疫法による停留を受け入れた病院、医療施設のために使用する土地・家屋の所有者、医療品・食品等を売り渡すように要請を受けた所有者等、あるいは治療にあたっている間に感染してしまった医師等に限定されている(法第62条、第63条)。失業した人や収入が激減した中小事業者などへの財政措置は緊急事態宣言とかかわりなく、早急に実施されるべきものであろう。
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2 医療従事者もすでにキャパシティ・オーバーになっているのではないかと推測する。その意味では、感染をこれ以上まん延させないことが最大課題である。