ロックダウンからの「出口戦略」、「免疫獲得証明書」を発行とその問題点とは
抗体検査は重要な武器になる可能性があるが、問題も......Sky News-YouTube
<都市封鎖を実施している国では、その「出口戦略」の検討がすすめられている。ドイツの研究チームは、10万人以上を対象に、新型コロナウイルスへの抗体の有無を調べる血液検査を実施する計画を明らかにした......>
世界各国で、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制または遅延させるため、国や地域を封鎖し、国民や市民、企業の活動を強制的に制限する「都市封鎖(ロックダウン)」の措置が講じられている。イタリアでは、2020年3月11日から実施されている全産業休業措置期間が4月13日まで延長され、スペインでも、3月30日から4月9日までの間、国内の経済活動を原則として停止している。
都市封鎖は、人々の行動を制限し、人と人との接触機会を減らすことで、新型コロナウイルスが他の人に飛散する機会を低減させるもので、感染拡大を一時的に抑制するものの、これを解除すれば、爆発的な感染拡大が再燃するおそれがある。そのため、都市封鎖を実施している国では、その「出口戦略」の検討がすすめられている。
ドイツの研究者、10万人以上に抗体検査実施を計画
独誌「デア・シュピーゲル」によると、独ヘルムホルツ感染症研究センター、ドイツ連邦保健省傘下のロベルト・コッホ研究所(RKI)らの研究チームは、4月以降、10万人以上を対象に、新型コロナウイルスへの抗体の有無を調べる血液検査を実施する計画を明らかにしている。
新型コロナウイルスが国内でどのくらい広がっているのかを把握するとともに、実際の致死率を明らかにするのが狙いだ。この抗体検査で陽性であれば、すでに新型コロナウイルスの保菌者となっており、一定の免疫を備えていると考えられる。
この研究プロジェクトを主導するヘルムホルツ感染症研究センターの疫学者ジェラール・クラウゼ教授は「この抗体検査で新型コロナウイルスへの免疫獲得が証明された人に『免疫獲得証明書』を発行し、優先的に行動制限を解除していく」というアイデアを提案している。たとえば、新型コロナウイルス感染症から回復した医療従事者を早期に職場復帰させたり、学校再開にあたって「免疫獲得証明書」を発行された教職員から優先的に配置することなどが可能になるという。
このアイデアは「新型コロナウイルス感染症から回復し、抗体検査で陽性であれば、長期にわたって感染から免れる」ことを前提としている。しかしながら、現時点では、新型コロナウイルスについて解明されていないことも多い。
再感染しない? 日本では再感染の例も
アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は、米テレビ番組「ザ・デイリー・ショー」で「100%確実とは言い切れないが、新型コロナウイルス感染症から回復した人は免疫を持っているだろう」との見解を語っている。
一方、日本では、1月29日に新型コロナウイルスへの感染が確認された大阪府在住の40代女性が、2月6日に陰性となったものの、2月26日に再び陽性となった。同様の症例は、4月6日、北海道でも確認されている。
また、免疫が獲得できるとしても、免疫が持続する期間はわかっていない。コロナウイルスの一種であるSARSコロナウイルスで引き起こされる重症急性呼吸器症候群(SARS)の患者でも、免疫が持続する期間は感染からわずか1年程度だ。
また、このアプローチにおいては、抗体検査の精度を担保することも不可欠である。英国では、新型コロナウイルスの検査キットが薬局などで販売されつつあるが、英紙ガーディアンによると、その信頼性には、ばらつきがあるのが現状だ。
偽造が横行するおそれも
新型コロナウイルスへの抗体獲得が証明された人から優先的に行動制限を解除するというアプローチを採ると、偽造が横行するおそれもある。英イーストアングリア大学のポール・ハンター教授は「医療従事者などの一部の職種に限定しなければ、優先的に行動制限を解除してもらい、職場復帰しようと、人々が外出して、新型コロナウイルスに意図的に感染しようとするかもしれない」との懸念を示している。