塀の中の新型コロナウイルス感染実態 米刑務所、次々「釈放」の波紋
スクリーニングなしで釈放
一部の拘置所からは、感染した可能性のある収監者が釈放されている。ジョージア州マリエッタでは、窃盗の容疑で収監されているオーブリー・ハーディウェイさん(21歳)に、咳、頭痛、喉の痛み、39度を超える発熱の症状がみられた。「我慢できない、ひどい体調だった」と、彼は言う。
体調を崩してから4日後、ハーディウェイさんはインフルエンザ、連鎖球菌性咽頭炎の検査を受けた。どちらも陰性で、近隣の病院に運ばれ、血液検査などを受けた。新型コロナの検査とは告げられなかったという。
医師は保安官代理にハーディウェイさんを隔離するよう勧告したが、拘置所に戻され、友人らが保釈金を払ったことで、数時間後に釈放された。
ハーディウェイさんは、自分に接触した同じ監房の収監者や刑務官をウイルスに曝露させた可能性があると考えている。この拘置施設の内情に詳しい複数の情報提供者によると、少なくも保安官代理1人が新型コロナ陽性と判定され、2人目の感染者も隔離されているという。
各地の拘置所は、ウイルスの侵入を防ぐさまざまな対策を講じている。書類上の登録さえ済まないうちに新規入所者のスクリーニングを行い、パトカーの車内やガレージ内で体温を測るところもある。医学的に感染していないことが確認されるまで新規入所者を隔離するところもある。
一方で、何も対策を取っていない拘置所もある。連邦刑務所職員の労働組合副委員長を務めるサンディ・パー氏によると、刑務官が職務中にマスクを着用する許可を求めたが、連邦刑務所局は現時点で要望を却下している。刑務所局にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
同局ウエブサイトによると、これまで連邦刑務所の収監者14人、職員13人が新型コロナ陽性と判定されている。
釈放前に収監者のスクリーニングを行っている地方自治体もあれば、ワシントン州のキング郡矯正施設のようにそうした措置を行っていないところもある。
キング郡成人・青少年拘置部のデービッド・ウェイリッチ部長は、「現時点では、身体的・精神的に何らかの既往症がないかぎり、釈放に際して、収監者に対する高度なスクリーニングは行っていない」と話す。同郡によれば、この施設では少なくとも矯正官の1人が新型コロナに感染した。
オハイオ州のハミルトン郡司法センターは、釈放前に体温をチェックしている。フロリダ州セミノールのジョン・E・ポーク矯正施設は、兆候が見られる収監者を外部の医療機関で受診させている。
既存の収監者に対して新型コロナに関する資料を配布したり、礼拝や教育プログラム、面会を取りやめている施設もある。
コロラド州リトルトンの連邦刑務所に収監されているスティーブン・ジョーンズさん(55歳)は、「誰もがそれを予期している」と話す。「ウイルスがここに入ってきたらおしまいだ」
(翻訳:エァクレーレン)
[ニューヨーク ロイター]
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