韓国版「聖地巡礼」 動物園からカフェ、人気タレントの自宅まで
イケメン男子ばかりの人気カフェ
全州動物園は、場所を撮影チームに提供することによって名を広く知られることとなった。そして撮影チーム側は、動物園という特別なロケ地を確保できる。このようなWIN-WINの関係であるが、作品の方がリードする形でロケ地が誕生したドラマもある。
韓国ドラマ『コーヒープリンス1号店』は、2008年にテレビ東京で日本でも放送されていた人気ドラマだ。ドラマの題名にもなっている「コーヒープリンス」というイケメンウェイターばかりのカフェが舞台となっているのだが、このカフェ、実際にソウルの学生街・弘大(ホンデ)に存在する。
これは、元々あったカフェを新装開店しようと考えていたオーナーに、ロケ地を探していた知り合いが、「無料で改装するので、その代わりドラマを撮影させてくれないか」と依頼したそうだ。撮影終了後、オーナーは別の名前で再オープンさせるはずだったが、予想以上にドラマの人気が出たため、TV局側と協議しドラマそのままの名前とコンセプトで営業を続けることとなった。その後、ドラマは世界各国で放送され、舞台となったカフェには様々な国の客が訪れるようになった。
あまりに注目され聖地が荒らされた例も
JTBC Entertainment / YouTube
このような成功例も数多くある一方で、撮影地として有名となりすぎたため、その後うまくいかなくなってしまった失敗例もある。
人気歌手イ・ヒョリとイ・サンスン夫婦が暮らす済州島でのスローライフを紹介するリアリティー番組『ヒョリの民宿』は、JTBCで2017年にパート1、その後続編として2018年にパート2が放送された。さらに現在では、Netflixなどのネット配信もされ世界中で楽しまれている人気番組である。
番組内では、イ・ヒョリ&イ・サンスン夫婦と猫や犬数匹が実際に暮らしている家に、IU、少女時代のユナ、パク・ボゴムといった人気芸能人がアルバイトとして登場。応募者の中から選ばれた一般人数組を、宿泊客として家に迎えるというリアリティショーだ。
韓国にスモールウェディングブームを巻き起こしたイ・ヒョリ&イ・サンスン夫婦の自宅に泊まれるということで話題を呼んだ番組だったが、放送が開始されると、ネット上ではすぐにロケ地であるこの家の住所特定が始まった。
そして、家の場所を示した地図や住所がオンライン上で出回ってしまったため、大型観光バスがすぐ近くまでやってきたり、ドアが叩かれたり、勝手に敷地内に侵入されるなどの被害を受けるようになってしまう。
夫婦はプライバシー侵害を止めるよう訴えたが、その後も収まることはなく、周囲への迷惑なども考えて、済州島を離れることなってしまった。
その後、番組サイドは「今後、第三者が敷地を買い取ったとしても、居住地として活用することは容易ではないと判断した」「コンテンツブランドのイメージ管理と出演者保護のため、イ・ヒョリ、イ・サンスン夫婦との合意のもとで、番組が敷地を買い取った」と発表した。
舞台の場所にリスペクト忘れずに
自分の大好きな作品の舞台となった場所が実際に存在するなら、「その場所に行ってみたい」「できるなら主人公が立っていた同じ場所で記念撮影をしてみたい」と誰しもが思うだろう。その欲求をうまく生かせれば観光に繋がり、新たな作品の撮影隊誘致にもつながる。
実際、韓国で1999年に日本映画『ラブレター』(岩井俊二監督)が公開され大ヒットした後、映画の舞台となった北海道には、韓国からの観光客はもちろん、韓国のドラマ、映画、CMの撮影スタッフが数多く押し寄せるようになった。
だからと言って元々の住民に迷惑をかけていいわけではない。訪問する側も「聖地」と呼ぶぐらいなのだから、リスペクトを忘れないようにしたい。
今は訪れることが出来ない「聖地」だが、いつか新型コロナの危機が去ったときに訪れることができるよう、自身や周囲の人が感染しないように気をつけながら、行ってみたい「聖地」について思いを巡らしておこう。