ポスト・コロナの世界経済はこうなる──著名エコノミスト9人が語る
The Post-Pandemic Economy
現代のグローバル化は2008年の金融危機で大打撃を受け、その後もEUの債務危機、イギリスのEU離脱、米中貿易戦争、さらにはポピュリズムの台頭に脅かされてきた。
コロナ危機は先進国・途上国の別なく、世界経済に壊滅的打撃を与えた。これは1930年代の大恐慌以来の事態で、長期にわたって深刻な景気後退が続く可能性がある。大恐慌時のようにデフォルトに陥る国も次々に出てくるだろう。
感染封じ込めができても(それにも時間がかかるだろうが)、グローバルなサプライチェーンや外国旅行の安全性への懸念は残り、各国とも危機に備えて生活必需品の自給率を高めようとするだろう。
コロナ後の国際金融の枠組みがブレトンウッズ体制まで逆戻りすることはないにせよ、グローバル化の大幅な後退は避けられそうにない。
コロナ前の病弊がさらに悪化する
■アダム・ポーゼン(ピーターソン国際経済研究所所長)
コロナ危機は以前からあった世界経済の4つの症状をさらに悪化させるだろう。大手術をすれば治癒できるが、さもなければ慢性化し、経済の息の根を止めかねない。
1つは生産性の伸び悩みや長引くデフレ状態による長期停滞だ。パンデミック後に人々がリスクを避けて貯蓄にいそしむと、内需が冷え込みイノベーションは抑えられて、この症状は悪化する。
2つ目は、富める国と貧しい国の危機対応力の格差。これもコロナ後にさらに広がる。
3つ目は、基軸通貨としての米ドルへの過剰な依存。コロナ危機で市場はリスク回避のためにドル買いに走り、自国通貨建ての取引を増やしたい国はいら立ちを募らせた。
最後に、経済ナショナリズムの高まりがある。貿易・金融取引を全て断ち切る「閉鎖経済」は不可能でも、コロナ後に各国が鎖国的な政策を取れば、1つ目と2つ目の症状が悪化し、3つ目の要因から金融の覇権争いも激化する。
協調行動を取りやすい中銀の役割が増す
■エスワール・プラサド(コーネル大学教授)
コロナ禍で世界経済が大打撃を受けるなか、頼りになる助っ人が辣腕を振るっている。各国の中央銀行だ。金融政策の鉄則をかなぐり捨て、「禁じ手」の使用もいとわない。
FRB(米連邦準備理事会)は金融市場の安定化を目指し、大規模な債券購入によって流動性を供給。ECB(欧州中央銀行)も債券購入の制限を事実上撤廃した。イングランド銀行は、政府がコロナ対策で資金不足に陥った場合、直接的に融資を行える枠組みを作った。