約50年にわたる月探査の集大成:月の統合地質図が初めて作成される
アポロ計画以降の研究活動の集大成 NASA/GSFC/USGS
<アメリカ地質調査所(USGS)は、NASAやアメリカ月惑星研究所(LPI)との恊働で作成した世界初の「月の統合地質図」を発表した......>
アメリカ地質調査所(USGS)は、2020年4月20日、アメリカ航空宇宙局(NASA)やアメリカ月惑星研究所(LPI)との恊働で作成した世界初の「月の統合地質図」を発表した。オンラインで公開されており、無料でダウンロードできる。
「アポロ計画」以来、約50年にわたる月探査や研究活動の集大成
この地質図は、1961年から1972年までのNASAの「アポロ計画」で得た情報に、NASAの月周回無人衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」が収集した地形データや宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月周回衛星「かぐや」が測定した標高データを統合したものだ。地理情報システム(GIS)ソフトウェアを用い、ひとつの地図としてつなぎ合わせることに成功した。
縮尺500万分の1で、月面のクレーターやクレスト(背斜冠)、割れ目、尾根、断層などの位置が表わされている。また、アメリカ地質調査所では、この地質図において、月の岩石層の統一的記述を定め、従来、地図ごとに齟齬があった岩石の名称や記述、年代を標準化している。
NASA/GSFC/USGS
この地質図は、年代や地形分類によって色分けされている。たとえば、ピンク色で表示されているのは38億5000万年前から38億年前のインブリム代のクレーターであり、黄色で表示されているのは11億年前以降のコペルニクス代にできたクレーターだ。
今後のミッションの計画策定に役立つ
この地質図は、「アポロ計画」以来、約50年にわたる月探査や研究活動の集大成ともいえる。今後の月探査ミッションの計画に活用され、月の歴史の解明にも役立てられるだろう。
NASAでは、現在、2024年までに月面有人探査を目指す「アルテミス計画」をすすめている。かつてNASAの宇宙飛行士を務めていたアメリカ地質調査所のジム・レイリー所長は「NASAの今後のミッションの計画策定に役立つものをアメリカ地質調査所が創出したことは素晴らしい」と、「月の統合地質図」の成果を高く評価している。