最新記事

中国

コロナ対応医療関係者への給料3倍:中国は2003年から法制化

2020年4月22日(水)19時53分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

この意見の「六」では、上述の条例(2003年5月7日)と改正された法律(2013年6月29日)に基づき、一刻も早く伝染病医療従事者に対する補償制度を具体的に決定せよという趣旨の指令を出している。危険度(自分自身が感染するかもしれないというリスクの大きさ)や従事時間の長さなどに応じた具体的な数値を出すように命じたわけだ。

2016年、最前線医療従事者の補償金額などを決定

こういった流れを受けて、2016年に当時の中央行政省庁の一つであった「人力資源と社会保障部」が「伝染病流行防治人員臨時業務補助を決定することに関する通知」(人社部規[2016]4号)を発出した。この人社部の法規[2016]4号により、ようやく具体的な補償金額が明示された。

但し、2018年3月の全人代(全国人民代表大会)で国務院機構改革が承認され、全ての中央行政省庁に対して編集替えを行った。そのときに「人力資源と社会保障部」は解消して、「退役軍人事務部」(一部の退役軍人に関する業務)や「国家医療保障局」(医療保障制度を管轄)などに業務の一部を移管し、別途「国家衛生健康委員会」を設立した。

これ以降、伝染病の予防治療に関する司令塔は「国家衛生健康委員会」が担当することとなった。

最前線の現場で命を懸けて患者の治療に当たっている医療従事者に対する保証は、「平常の給金の3倍」を与えることを基本として、「全ての医療従事者への一日当たり300元から200元の補助金を2倍にして別途与える」(1人民元=15.18日本円)こととなった。

さらに第一線で働いた医療関係者はみな一律に「英雄」として位置づけることとなっている。そんな、何にもならない「名誉」などもらっても役に立たないと思うかもしれないが、実は「英雄」として位置づけられれば、その後の人生における「年金」や「福祉」などに関して、さまざまな優遇策があり、「実益」を伴っていることは注目に値する。

もっとも、全世界の第一線でコロナ患者の治療に当たっている医療関係者は誰もが「自分が助けなければならない」という使命感に燃えており、そこには無私の信念があり、心から敬意を抱く。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中