最新記事

中国

猫のコロナ感染率は15%――「人→猫」「猫→人」感染は?

2020年4月12日(日)19時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

それによって人間に非常に接近した形で生息している猫を、今後はどのように扱い労わらなければならないのかという、愛猫家には必読の論文となっている。

そこで、この論文に関しては、少々立ち入って解読してみることとする。

1.論文の要旨

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)は、中国の武漢で初めて報告され、急速に世界中に広がった。これまでの研究では、猫が新型コロナウイルスの感染動物である可能性が示唆されていた。

ここでは、特異的な血清抗体を検出することにより、猫における新型コロナウイルスの感染を調査した。

武漢市の猫から血清サンプルを採取し、新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)発生後に採取した102例と、発生前に採取してあった39例を含むコホート(観察対象となる集団)を検査した。

発生後に採取した102例中15例(14.7%)の猫が感染していた(15例の猫血清が間接酵素連結免疫吸着法<ELISA>により、新型コロナウイルス感染が陽性であった)。我々のデータは、武漢の猫が新型コロナウイルスに関して集団感染していることを示している。

コロナ肺炎発生前の猫には陽性はいなかった。

2.対象とした猫の所属分類とウイルス感染強度

新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)患者が飼っている猫、ペット病院にいる猫、野良猫など全ての所属分類を網羅している。また武漢ウイルスセンターには、新型コロナ肺炎発生前から、さまざまな動物が研究用に確保されており、またその血清を採取して時期別に保存してある。中国では2002年から2003年にかけてのSARS(サーズ)の流行が激しかったため、今後の再発に備えてさまざまな研究機関が設立されている。特にSARSも野生動物由来のウイルスだったので、その領域における研究は盛んだ。

したがってコロナ発生前の猫の感染状況と発生後の感染状況を比較することができるのである。

ウイルス感染強度(中和力価)に関しては、陽性患者が飼っていた猫が非常に高く、ペット病院や野良猫から採取した血清測定からは、陽性であるものの強いウイルス感染度は見られなかった。

データは、コロナ感染者(COVID-19患者)との密接な接触があればあるほど猫の感染度は高く、コロナ感染者が猫に餌を与えた場合や、コロナ患者によって環境が汚染され、その汚染された環境との接触などによっても猫の感染が促進されることを示している。

なお、ELISA( Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay、酵素結合免疫吸着法、エライザ)法による陽性率は14.7%で、VNT(virus neutralization test、ウイルス中和試験)法による陽性率は10.8%である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 被害状

ビジネス

アングル:中国本土株の投機買い過熱化、外国投資家も

ビジネス

スターバックス、中国事業の戦略的提携を模索

ビジネス

英公的部門純借り入れ、10月は174億ポンド 予想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中