最新記事

中国

猫のコロナ感染率は15%――「人→猫」「猫→人」感染は?

2020年4月12日(日)19時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新形コロナで休館の米ジョージア水族館 子猫が「探索」 ATLANTA HUMANE SOCIETY/REUTERS

3月末、ベルギーで人から猫への感染例が報告されたが、ほぼ同時に中国の二つの研究所が猫の新型コロナ感染に関する論文を発表した。軽症・無症状感染者を自宅待機させる日本では知っておいた方がいいかもしれない。

ベルギーの場合

これに関しては日本でも少なからぬメディアが報道しているが、3月27日、ベルギーの保健当局は新型コロナウイルスに感染している人から、自宅で飼っていた猫にコロナが感染したと発表した。ベルギーでは初めての例とのこと。

ブリュッセル・タイムズによると、飼い主の女性にコロナの症状が現れてから一週間ほど経ったころ、飼い猫に嘔吐や呼吸困難あるいは下痢などの症状が出たため検査してもらったところ、新型コロナウイルス陽性であることが判明。ベルギーの保健当局は「これは特殊な事例だ」としているが、香港ではコロナ感染者の飼い犬がコロナに感染したという事例も報告されている。

この二つは単発の事例で、全体的にどういう傾向にあるのかは分からなかった。

猫やフェレットは感染しやすいが犬は感染しにくい

ところが奇しくもほぼ時を同じくして、中国のハルビン獣医研究所が3月30日、

Susceptibility of ferrets, cats, dogs, and different domestic animals to SARS-coronavirus-2""という論文のプレプリント(preprint=正式に査読付き学術誌に掲載される前の学術論文の最終版)を発表した。

日本語で書けば「フェレット、猫、犬および他の国内動物に関する新型コロナウイルス(SARS-coronavirus-2)の感染のしやすさ」という感じである。

4月8日になるとアメリカの学術誌「サイエンス」に正式に掲載されたことから、CNNやロイターが報道し、日本のメディアでも報道されることになった。

この論文の結論をひとことで言えば、「猫やフェレットは感染しやすいが、犬、豚、鶏、鴨などは感染しにくい」ということである。

ただ実験方法が高濃度の新型コロナウイルスを猫の鼻に強く噴霧したりなど、非常に人為的で、その後の「処分」に関しても残酷な面があるので、そう詳細に論文内容を分析しようという気持ちを抱かせない。

それに比べると次にご紹介する論文は非常に自然であるだけでなく、コロナ感染が蔓延している人類にとっては必読と思われるので、詳細に考察してみたい。

猫のコロナ感染率は15%

発表時期から言って、なんとも「奇しくも」だが、4月1日に、プレプリント論文"SARS-CoV-2 neutralizing serum antibodies in cats: a serological investigation"というプレプリントサーバーに掲載され公表された。

論文のタイトルを日本語で書けば「猫におけるSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)の中和血清抗体 : 血清学的考察」となる。作者はQiang Zhang(張強)博士や彼の指導教官(いずれも華中農業大学微生物学国家重点実験室教授)や武漢ウイルスセンターの研究者たちだ。

研究結果をひとことで言うならば、「武漢における新型コロナウイルス肺炎発生後の猫を102匹選んで検査した結果、約15%(正確には14.78%)が陽性を示した(コロナ感染していた)。コロナ肺炎発生前の猫では陽性反応はない(感染していない)」ということである。

つまり「猫は、人間がコロナ肺炎に罹っていない(ウイルス感染していない)状態ではコロナ肺炎に罹ることはなく(ウイルス感染することはなく)、人間がコロナ肺炎に罹った時にのみコロナ肺炎に罹る」という、これまでの研究にはない、新しい知見を与えてくれたという意味で、この論文の価値は大きい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防

ワールド

アングル:トランプ氏のカナダ併合発言は「陽動作戦」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 10
    ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 9
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 10
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中