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新型コロナウイルス

新型コロナ:「医療崩壊」ヨーロッパの教訓からいま日本が学ぶべきこと

Lessons from the European Lockdown

2020年3月29日(日)13時30分
國井修(グローバルファンド〔世界エイズ・結核・マラリア対策基金〕戦略投資効果局長)

日本の対策は正しいのか

では欧州の対策に比べて日本はどうだろうか。他国に比べて検査数が少ないとの指摘があるので、よりよい指標と思われる新型肺炎による「人口100万人当たりの死亡者数」で比較すると(3月27日時点)、イタリア136人、スイス22人、アメリカ4人に比べて日本は0.4人と極めて少ない。

現在、日本は、社会・経済機能への影響を最小限にとどめながら、感染拡大防止の効果を最大限にし、①クラスター(患者集団)の早期発見・早期対応、②患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保、③市民の行動変容という基本戦略を用いている。

これは理にかなった方法で、特に①は成功すれば、世界に胸を張って発信すべき有効な戦略だ。

また、密閉・密集・密接の3条件が同時に重なった場を避ける、むやみに軽症者や希望者に検査をせず、医療機関での感染を拡大させない方針も適切だと思っている。

ただし、どこまで「自粛」だけでオーバーシュートせず「持ちこたえられるか」「感染を収束させられるか」は分からない。民主主義、自由主義を謳歌する欧州で国民が自粛できず、持ちこたえられなくなって政府が規制に入った教訓から学べるものはある。

「日本人にはディシプリン(規律・自制心)がある」と海外ではよく言われる。欧州に比べて、日本でこれだけ感染が抑えられている理由もそこにある、と説く人もいる。

しかし、新型コロナの最大の武器はステルス攻撃だ。「油断」に付け込んで潜入し、突然爆発的な破壊力を示す。日本もロックダウン(都市封鎖)を必要とする日が来るかもしれない。今、まさに日本人のディシプリンを見せるときともいえる。

(筆者はジュネーブ在住。元長崎大学熱帯医学研究所教授。これまで国立国際医療センターやユニセフ〔国連児童基金〕などを通じて感染症対策の実践・研究・人材育成に従事してきた。近著に『世界最強組織のつくり方──感染症と闘うグローバルファンドの挑戦』〔ちくま新書〕)

<本誌2020年4月7日号(3月31日発売)掲載>

【参考記事】クルーズ船の隔離は「失敗」だったのか、専門家が語る理想と現実

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2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。

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