コロナ危機の最中の韓国総選挙──文在寅政権に勝算あり
A Mid-Term Test for Moon Jae-In
三・一独立運動記念日の式典で万歳三唱する文大統領(前列中央) KIM MIN-HEE-POOL-REUTERS
<文大統領の評価が問われる4月の韓国総選挙、複雑な政党政治の動きと結果を左右する3つの要素を分析する>
韓国の政党政治は時に非常にややこしい。目まぐるしい党名変更や政党の分裂・合併の連続で、そこに複雑な選挙手続きが加わる。
新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)や国際的な経済危機の渦中にもかかわらず、韓国では4月15日に予定される総選挙の準備が進む。現政権の支持派も反対派もそれぞれ分断状態にあるなか、国論はますます分裂。今回の総選挙が大接戦になるのは間違いない。
総選挙の政治的文脈を理解するには、近年の韓国政治の展開を少し振り返ってみる必要がある。左派寄りで革新派の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を支える政党は、「共に民主党」だ。文が大統領の座に就いたのは、前任者で保守主義者の朴槿恵(パク・クネ)の失脚後。2016年に発覚したスキャンダルへの対応を誤った朴は翌年、弾劾による罷免で失職した韓国史上初の大統領になり、2審で懲役25年の実刑判決を受けた(その後、最高裁が審理差し戻し)。
2016年のスキャンダルは朴のキャリアを破壊しただけでなく、その支持基盤だった保守政党の支持率を2000年代前半以降で最低水準にたたき落とした。一方、文と共に民主党の支持率は急上昇。2017年の大統領選では、雇用創出や公正な社会政策、対北和解を公約にした文が圧勝した。
保守派連合の脅威度
つまり今回の総選挙は、文の政策と文政権の現時点の実績の評価を問う「国民投票」と見なすべきだ。そこから、選挙結果を左右する3つの重要な要素が浮かび上がる。
1つ目の要素は文政権の政策の進展だ。問題は、とりわけ社会・経済分野で、これまではっきりした結果が出ていないこと。反対派が最低賃金の引き上げや企業への圧力を激しく非難する一方、当初は勢いがあった改革が今では行き詰まっているとの不満の声が支持派の間では上がる。
文政権の下、韓国は米中の貿易戦争、および日本との摩擦による深刻な打撃も受けた。その社会改革の是非については、経営者のみならず一部のブルーカラー労働者の間でも激しい論議を招いた。北朝鮮との関係に関して言えば、南北首脳会談の開催に巨額を費やしただけにすぎないと、反対派は指摘する。
一方で支持派は、これまでの3年間は政策上の優先課題を達成するための基盤づくりの期間だったと主張している。
彼らに言わせれば、文が着手した改革は一般従業員の労働条件を改善し、破綻しかけた年金制度を体系化した。また2018~19年の外交的成果で、文はアメリカと北朝鮮の指導者との交渉の土台をつくり上げたと称賛。非核化は今や主に米政府の動き次第であり、米大統領選を控えるなかで文にできるのは待つことだけだ――と彼らは擁護する。