イタリアで新型コロナウイルス「隠れ死者」増加 高齢者施設の実態
介護施設は「見捨てられた」
2月21日に北部イタリアで初の新型コロナウィルス感染が確認された直後から、高齢者介護施設では来訪を禁止した。この疾病に対して最も脆弱とみられる高齢の入居者への感染リスクを抑制するためだ。
クレモナ県の高齢者介護施設30カ所をまとめる協会ARSACのウォルター・モンティニ会長は、36人収容の小規模介護施設で1日7人の死者が出たと話す。
「明らかに死亡例が増えている。クレモナの地元紙を見るだけで分かる。通常、訃報欄は1ページしかない。今日は5ページもある」
モンティニ会長は3月2日、介護スタッフ向けにマスクを供給するよう要請を行ったが、品薄の状況を考慮し、病院のニーズの方が高いと判断されてしまった。モンティニ会長は、介護スタッフの検査も必要だと話すが、実際には行われていないという。
現地の保健当局は検査・治療に関する政府の指令を受けていると述べており、それによれば、入院が指示されるのは「呼吸器系の重い症状」のある患者に限られてるという。
いわゆる「レジデンツェ・サニタリエ・アシステンツィアリ(長期介護ホーム)」には、患者の治療を行うことのできる有資格医療スタッフが配置されているという。
クレモナ地域の小さな街にある長期介護施設で働く看護師は、こうした施設は「見捨てられている」と言う。
この看護師が担当するセクションでは、40人の入所者のうち38人が高熱を出して寝込んでいるが、介護スタッフは適切な防護服もなしに働かざるをえないという。だが地元の病院は、毎日数千人も報告される新規感染者のためにすでにパンク寸前の状態にあり、移送の手配をすることなど不可能だと分かった。
「体調が悪くなった人は、施設内の医師による診察を受けられる」と彼女は言う。「呼吸困難になった場合は病院に移送しようとしているが、この施設内の患者40人のうち、何とか病院に移送できたのは2人だけだ」
ロンバルディア州の地域保健当局の広報担当者は、この状況についてコメントはできないとしつつ、詳細を確認中だと話している。イタリア政府からは今のところコメントは得られていない。