最新記事

感染症

イタリアで新型コロナウイルス「隠れ死者」増加 高齢者施設の実態

2020年3月27日(金)09時41分

介護施設は「見捨てられた」

2月21日に北部イタリアで初の新型コロナウィルス感染が確認された直後から、高齢者介護施設では来訪を禁止した。この疾病に対して最も脆弱とみられる高齢の入居者への感染リスクを抑制するためだ。

クレモナ県の高齢者介護施設30カ所をまとめる協会ARSACのウォルター・モンティニ会長は、36人収容の小規模介護施設で1日7人の死者が出たと話す。

「明らかに死亡例が増えている。クレモナの地元紙を見るだけで分かる。通常、訃報欄は1ページしかない。今日は5ページもある」

モンティニ会長は3月2日、介護スタッフ向けにマスクを供給するよう要請を行ったが、品薄の状況を考慮し、病院のニーズの方が高いと判断されてしまった。モンティニ会長は、介護スタッフの検査も必要だと話すが、実際には行われていないという。

現地の保健当局は検査・治療に関する政府の指令を受けていると述べており、それによれば、入院が指示されるのは「呼吸器系の重い症状」のある患者に限られてるという。

いわゆる「レジデンツェ・サニタリエ・アシステンツィアリ(長期介護ホーム)」には、患者の治療を行うことのできる有資格医療スタッフが配置されているという。

クレモナ地域の小さな街にある長期介護施設で働く看護師は、こうした施設は「見捨てられている」と言う。

この看護師が担当するセクションでは、40人の入所者のうち38人が高熱を出して寝込んでいるが、介護スタッフは適切な防護服もなしに働かざるをえないという。だが地元の病院は、毎日数千人も報告される新規感染者のためにすでにパンク寸前の状態にあり、移送の手配をすることなど不可能だと分かった。

「体調が悪くなった人は、施設内の医師による診察を受けられる」と彼女は言う。「呼吸困難になった場合は病院に移送しようとしているが、この施設内の患者40人のうち、何とか病院に移送できたのは2人だけだ」

ロンバルディア州の地域保健当局の広報担当者は、この状況についてコメントはできないとしつつ、詳細を確認中だと話している。イタリア政府からは今のところコメントは得られていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中