過度な運動はウイルス感染のリスクを高める
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<世界各地で在宅勤務が奨励され運動不足になりがちだ。運動と感染症リスクとの関係をふまえ、効果的な運動のコツをまとめた......>
適度な運動は免疫能を高め、細菌やウイルスなどの感染予防に有効である一方、過度な運動はこれを低下させ、感染リスクを高める。
運動習慣と感染リスクとの関係は「Jカーブ」で表わされる。運動習慣のない人の感染リスクを平均とすると、適度な運動を習慣づけている人は感染リスクが平均以下に下がる一方、過度に運動するとかえって感染リスクは平均よりも高まる。
過度な運動は、呼吸器ウイルスに感染しやすい状態を引き起こす
米サウスカロライナ大学の研究チームが2008年11月に発表した研究結果では「サッカー選手やクロスカントリー競走の選手が、過酷な試合やトレーニングをすると、分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)が減少した」ことが示されている。
分泌型免疫グロブリンAは、免疫系で用いられ、ウイルスなどの病原体と結合して無力化するタンパク質だ。上気道感染症(URTI)と密接な関わりがあり、分泌型免疫グロブリンAのレベルが低下すると上気道感染症にかかりやすくなる。つまり、過度な運動は、呼吸器ウイルスに感染しやすい状態を引き起こすおそれがあるというわけだ。
香港大学の研究チームでは、1998年の香港でのインフルエンザによる死亡者2万4656人について、インフルエンザによる死亡リスクと運動習慣との関連を分析。運動をまったくしない人と、週5回以上、過度に運動する人は、適度に運動している人に比べて、死亡リスクが高くなることがわかった。
また、定期的な運動はインフルエンザ感染症の重症化リスクの軽減につながる。2009年に発表されたマウス実験によると、3ヶ月以上、定期的に運動していたマウスは、運動していないマウスに比べて、インフルエンザに感染しても、症状が軽く、ウイルス量、炎症性サイトカインやケモカインのレベルも低かった。
十分な食事と睡眠で免疫系を高め、前向きな思考を心がける
これらの研究成果をふまえ、米ウェイン州立大学のタマラ・ヒュー=バトラー准教授とマリアンヌ・ファルマン教授は、効果的な運動のコツとして、以下の点を指摘している。
・20分から45分間、軽度から中程度の運動を週3回程度行う
・自宅などでの隔離期間中は体力や健康の維持に努める(けしてこれらを高めようとはしないこと)
・運動中、他者との身体的な接触は避ける
・使用後は、運動器具を洗い、除菌する
・ジムを利用する際は、適度な換気をし、他の利用者から離れて飛沫感染を避ける
・十分な食事と睡眠をとって免疫系を高める
・前向きな思考を心がける
また、リスクの高い行動として、以下の点も指摘されている。
・極度に疲労した後の運動は避ける
・風邪のような症状があれば運動をやめる
・週5回以上の運動は避ける
・密集した閉鎖空間での運動は避ける
・ドリンクの回し飲みや食器の共有は避ける