新型コロナウイルスの「0号患者」を探せ!
Scientists are still searching for the source of COVID-19: why it matters
世界中の専門家が答えを探し求めている China Daily via REUTERS
<ウイルスの宿主を突き止めてヒトへの感染のメカニズムを解明できれば劇的に損失を減らし多くの命を救うことができる>
今や世界中に感染が拡大している「新型コロナウイルス(SARS CoV-2)」。最初にヒトへの感染が報告されたのは2019年の12月で、中国・湖北省の武漢市で41人が原因不明の肺炎を発症し、その後の分析で、原因が新型コロナウイルスだということが明らかになった。
41人の患者のうち3分の2が、華南の生鮮市場(魚介類をはじめ野生生物、ヘビ、鳥や数種類の動物の肉や死骸を販売)に接触していたことが確認された。市場は即座に閉鎖され、いまだに再開していない。
以降、世界中の科学者たちが新型コロナウイルスの正体を突き止めようと、研究を続けている。
最初の手がかりが明らかにされたのは、2020年1月。中国当局が、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の患者から採取した検体を分析し、新型コロナウイルスのゲノム配列情報を公開したのだ。これにより、新型コロナウイルスは03年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の大流行を引き起こしたSARSコロナウイルス(SARS-CoV)と同じグループに属することが分かった。
「0号患者」の感染源は
だが今回のウイルスとSARSコロナウイルスには大きな違いがあるため、その起源は何かという疑問が浮上している。最初の感染者の3分の2が華南の市場に接触していたことから、この市場となんらかの関係があるのではないかという説が最も有力だが、いまだにその証拠はない。しかもその後の調査で、報告された最初の患者(19年12月1日に症状が出始めた)と市場やそのほかの患者との間につながりが確認されなかったことが分かっている。
新型コロナウイルスをめぐる問題の中でも最も重要な問題は、ウイルスの発生源が何かについてのはっきりしたデータがないことだ。だが本当の最初の感染者である「0号患者(初発症例)」の感染源が何かを突き止めることは、とても重要だ。今回のウイルスのパンデミック(世界的な大流行)につながった人間の行動や活動を含む「特定の状況」を理解することで、将来のウイルス流行のリスク要因に関するヒントが得られる可能性があるからだ。
今回のウイルスの発生源については、最初の感染例が報告された直後から、さまざまな憶測が飛び交っている。その中には、ウイルスは武漢市疾病対策予防センターの研究所から流出したとする説もあった。これを受けて複数の著名な科学者が共同で声明を発表し、この「陰謀説」は事実ではないと非難した。同様に、ウイルスの発生源がヘビだとする説も否定された。