韓国シム・ウンギョン、日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞 日本映画の新人は芸歴17年の「カメレオン」女優
シム・ウンギョンの日本アカデミー賞受賞を伝える韓国のニュース SBS 뉴스 / YouTube
<またも冷え込みつつある日韓関係だが、映画の力は国境を越えてすばらしい映画人の交流の結実をみせている>
今月6日、グランドプリンスホテル新高輪にて第43回日本アカデミー賞授賞式が行われた。今年は、新型コロナウイルスの影響もあり無観客スタイルでのやや寂しい授賞式となってしまったが、そんななかで大きな注目を集めるニュースとなったのが、韓国人女優シム・ウンギョンが、日本アカデミー史上初となる外国人による最優秀主演女優賞を受賞したことだ。壇上で号泣しながら受賞スピーチをしている姿は感動的だった。
この『新聞記者』は、最優秀主演女優賞のほか、作品賞と松坂桃李が最優秀主演男優賞を受賞、日本アカデミー賞3冠に輝いた。このほかにも毎日映画コンクール日本映画優秀賞・女優主演賞、エランドール賞特別賞、TAMA映画賞特別賞・最優秀新進女優賞、新藤兼人賞プロデューサー賞などを受賞しており、これを受けて当初47館で凱旋上映が行われる予定だったが、その後映画ファンから次々と熱いリクエストが届き、結果143館が追加され計190館での再上映が決定したという。
一方、シム・ウンギョンの本国・韓国でもこの受賞をきっかけに『新聞記者』再上映が決定した。実はこの作品、昨年10月17日にすでに公開されていたが、日韓関係が冷え込んでいる時期でもあり、観客動員数は約1万人程度で上映終了していた。
しかし、6日のシム・ウンギョンの最優秀主演女優賞受賞の一報が入ると、ネットなどを中心に大きく報道され、それと同時に映画の内容も紹介されたため、映画自体も韓国国内での関心が高まったようだ。
既にネット上では配信サービスに登場していたが、受賞後ネイバーのVODサービス「シリーズオン」では、人気ランキング2位まで一気に上昇、多くの韓国人が映画を鑑賞した。また、映画の予告編が見られるネイバーのベストムービークリップでは検索ランキングで1位を記録した。
このように人々の関心が集まっていることから、韓国の映画シネコンチェーン最大手CGVは、『新聞記者』再上映を決定した。今月11日よりヨンサンや大学路、新村などのソウル市内と、釜山、大田など地方都市で上映が開始されている。また、14日からは光州にある独立系の光州劇場でも再上映が始まった。
テレビでの宣伝できず、口コミで動員伸ばす
映画『新聞記者』は、昨年6月28日に公開された。現役新聞記者である望月衣塑子の同名小説を原案にしたサスペンスストーリーで、松坂桃李さん演じるエリート官僚と、シム・ウンギョン演じる若手新聞記者のエリカが、内閣情報調査室でニュースを操作しているという国家の闇に迫る物語だ。
反政府的で告発もの映画であるがゆえに、テレビでプロモーションがほとんどできなかったと言われている。主演の松坂桃李はインタビューで、この映画の出演を決めたとき、周囲の人達から「よく出ることを決めたな」と言われ、驚かれたそうだ。また、シム・ウンギョンのキャスティングも、日本人女優にオファーしたがすべて断られたからだ、という説もある。