最新記事

韓国

ベトナム、日本には強硬だが、中国には黙る韓国政府の対応に疑問の声

2020年3月10日(火)20時15分
佐々木和義

入国制限への抗議を理由とする大使の呼び出しは日本だけ

日本政府は3月5日、同月9日から月末まで韓国と中国からの入国者に指定場所で2週間の待機を要請するなど入国制限を発表した。

航空機は到着空港を成田空港と関西空港に限定し、船舶も旅客運送の停止を要請、査証免除を停止し、両国にある日本国大使館や総領事館が発給した査証の効力を停止する内容で、14日間の待機と交通機関の利用自粛は日本人にも適用される。3月の帰任が決まっていた駐在員の一部は予定を繰り上げ、実施前の3月8日に帰国した。

韓国外交部は、同日夜に日本大使館の相馬弘尚総括公使を呼び、翌6日には康京和外交部長官が冨田浩司駐韓日本大使を呼んで抗議した。日本大使の呼び出しと抗議は第1次官の役目で、外交部長が大使を呼ぶのは異例であり、また同じ事案で大使館の高官を2人呼ぶのも異例である。ベトナム大使への抗議はアシアナ機への着陸不許可が主題で、入国制限への抗議を理由とする大使の呼び出しは日本だけである。

日本政府が中国と韓国からの入国制限を発表した翌3月6日、韓国外交部の趙世暎(チョ・セヨン)第1次官は会見で対抗措置を取ると述べ、9日から実施。9日0時から日本人の査証免除を中断し、発行済み査証の効力を停止した。外国人登録等が有効な人を除く日本旅券所持者は「健康状態確認書」を提出して、再度申請しなければならず、日本から入国するすべての外国人に対し、特別入国手続きを実施する。自国民も対象とする日本に対し、韓国人を対象とする措置はない。

中国人の入国は湖北省を除いて制限していない

ベトナムを非難し、日本に強硬な対抗措置を取る韓国政府だが、一方で、中国人の入国は湖北省を除いて制限していない。中国政府は公式には韓国人の入国を制限していないが、北京市や上海市、広東省など半数を超える19の省や市が韓国からの入国者は14日隔離し、駐韓中国大使館は査証の発給を事実上中断している。

1000人を超える韓国人が中国国内で強制隔離されたことを受け、外交部は中国大使を呼んで「面談」したが、抗議は行なっていない。青瓦台に提起された中国人の入国禁止を求める請願に76万人が同意し、リアルメーターが実施した調査でも過半数が中国人の入国禁止を求めている。日本には「相互主義」を主張して厳しく対抗する一方、中国に対応しない政府を批判する声が野党やマスコミ、国民の間から上がっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中