最新記事

韓国

ベトナム、日本には強硬だが、中国には黙る韓国政府の対応に疑問の声

2020年3月10日(火)20時15分
佐々木和義

康京和外交部長官は日本大使の呼び出し抗議 Jung Yeon-je/Pool via REUTERS

<韓国からの入国を制限する国が100カ国を超えるなか、唯一、日本に強硬な対抗措置を取るが、中国からの入国を制限しない韓国政府の対応に疑問の声があがっている......>

新型コロナウイルス感染者の急増を受け、3月9日時点で103の国と地域が韓国からの入国を制限している。
38の国と地域は韓国の入国をすべて禁止し、インドネシアなど6つの国と地域は大邱など一部地域からの入国を禁止する。中国の19地域など15カ国は入国者を2週間隔離する。

韓国からの入国を制限する国が100カ国を超えるなか、唯一、日本に強硬な対抗措置を取る一方で、感染者が最も多い中国からの入国を制限しない韓国政府の対応に疑問の声が上がっている。

ベトナムの入国制限措置に反発

韓国との経済交流が活発なベトナムは、2月28日、入国制限を決定した。韓国の対ベトナム貿易は中国、アメリカ、日本に次ぐ4位で、ベトナムにとっても韓国は第4位の貿易相手国である。ベトナムへの投資額は日本が最多だが、投資件数は韓国が最も多い。サムスンやLGをはじめ多くの韓国企業が進出し、管理や指導を行なっている。

そのベトナムが韓国との関係より新型コロナウイルスの感染防止を優先する決断を下したのである。ベトナム政府は韓国人に対する査証免除の停止と入国後14日間の隔離を決め、ホーチミン市は大邱と慶尚北道の出身者に対する労働許可の新規発給を停止した。

スマートフォンの58%をベトナムで製造するサムスン電子はハノイで予定していたモバイル研究開発(R&D)センターの起工式を中止、29日にはベトナムの空港当局が、ハノイ・ノイバイ空港に向けて飛行していたアシアナ機に着陸の不許可を通知し、同機は仁川空港に引き返した。

「防疫能力のない国の野暮な措置」と批判したが......

韓国外交部はベトナム大使を呼んで航空当局の対応に抗議し、康京和長官は3月4日の国会外交通商委員会で、非友好的で一方的な措置だと非難した。同長官はまた「防疫能力のない国が入国禁止という野暮な措置を取っている」と批判したが、その翌5日には、防疫先進国である日本とオーストラリア、シンガポールが入国制限を発表した。

オーストラリアは14日以内に韓国への渡航歴がある外国人の入国を禁止し、シンガポールも同じく14日以内に韓国への渡航歴がある人は国籍を問わず入国を停止すると発表、オーストラリアはまた韓国への渡航警戒を引き上げている。なお、中国に対する入国制限は、オーストラリアは2月1日、シンガポールは2月3日からそれぞれ実施している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場・午前=円が対ドルで上昇、相互関税発表

ビジネス

ヘッジファンド、米関税懸念でハイテク株に売り=ゴー

ワールド

ポーランド、米と約20億ドル相当の防空協定を締結へ

ワールド

トランプ・メディア、「NYSEテキサス」上場を計画
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    「関税ショック」で米経済にスタグフレーションの兆…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中