香港、新型コロナウイルスでデモは消えたが...... 行政府や中国への感情さらに悪化
反中ムード
ラム長官は、境界の全面封鎖について、差別的かつ非現実的だとして拒否している。香港行政府は、決定は世界保健機関の指針に基づいており、政治的な動機によるものではないとしている。
行政長官の事務局はロイターに対して「感染に対処するうえで行政府はただ公衆衛生だけを考慮しており、その行動は、確固たる科学的かつ専門的な勧告に裏付けられている」と述べている。
またラム長官は、ウイルスのまん延に対処し、企業の財務的な打撃を緩和するための措置に300億香港ドル(約4260億円)を投じると約束している。
すべての香港住民が行政府を批判しているわけではない。香港荷主協議会でエグゼクティブ・ディレクターを務めるサニー・ホー氏は、ラム長官が取った措置に満足していると述べ、「(批判派は)行政府が考慮しなければならない困難をひどく過小評価している」という。
だが、このように理解を示す人は少ない。香港住民の多くは、2003年にやはり中国本土で始まり、香港でも300人近い死者を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行を記憶している。
一部では、中国本土の住民や来訪者に対する敵意にまで転じている。
ソーシャルメディアで流布しているリストには、コロナウイルスのリスクが高いと見なされる地域からの来店客を拒否しているレストラン34店が記載されている。一部のレストランの店頭には、健康上の懸念を理由として「本土出身者お断り」の貼り紙が見られる。
美容室エッジー・サロンはフェイスブック上で「香港住民限定」で営業すると発表し、クォン・ウィン・ケータリングは、「境界が封鎖されないので、当店を封鎖します」と掲示している。
民主派のフェイスブックページでは、中国本土からの観光客をだまして、品薄になったハンドソープと見せかけて性的な用途のローションを売りつけた話が投稿されて人気を集めている。
「新たな最前線」
先週、政府が所有する公共住宅の一部を新型ウイルス検疫センターに転用する計画について、住民との協議が不足していることに怒る反対派の抗議集会が、少なくとも3地区で行われた。
1月には、抗議参加者の一団が転用対象ビルのロビーに放火した。
2019年末以降に結成された40余りの民主派労働組合の一部は、新型ウイルス流行に対してより組織的なアプローチを主導しており、現在の勢いを生かして香港行政府にさらに圧力をかけていこうと計画している。
医療従事者のストライキを企画したHAEAのウィニー・ユー会長は、労働組合を「我々の抗議活動の新たな最前線」と呼んでいる。
前出のチュン氏は、新たに結成された組合の大半は加入者をもっと増やさなければ変革を強いる力にはならないとしながら、他組合も「リレーのバトンを受け継いでストライキを継続して」ほしいと期待している。
新たに結成された会員数450人強の香港ホテル従業員組合のアレックス・ツイ会長は、HAEAのストライキについて、「香港人はストをやらないという思い込みを打破した」と話している。
(翻訳:エァクレーレン)
[香港 ロイター]
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