最新記事

火星

火星の火山斜面にある巨大な穴の正体は......

2020年3月5日(木)18時00分
松岡由希子

火星のパヴォニス山にできた巨大な穴 NASA/JPL/University of Arizona

<火星の赤道近辺の巨大な火山「パヴォニス山」の斜面を撮影した画像が公開され、山の真ん中にあいた大きな穴は、溶岩洞の天窓とみられている......>

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、2020年3月1日、火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」の高解像度カメラ「ハイライズ」が2011年に火星の赤道近辺の巨大な楯状火山「パヴォニス山」の斜面を撮影した画像を公開した。こんもりした山の真ん中にぽっかりとあいた大きな穴は、溶岩洞の天窓とみられている。

溶岩洞とは、火山噴火に伴う溶岩流により生成される洞窟で、その天井部分で崩落している場所を天窓と呼んでいる。

直径は35メートルで、洞窟の深さはおよそ28メートルと推定

火口から噴出した溶岩流が火山の斜面を流れるうちに表面が空気に触れて固まる一方、その下の溶岩流は流れ続けて空洞が生成され、さらに時が経つと天井が崩落して天窓ができる。

地球では、ハワイ島のサーストン溶岩洞や韓国・済州島の万丈窟、日本の富士山麓の溶岩洞群などが知られており、その天窓はいずれも直径6メートル程度だ。

matuoka0305c.jpg

ハワイ・キラウエア火山にできた溶岩洞の天窓 US Geological Survey

また、日本の月周回衛星「かぐや」が2009年に撮影した画像により、月でも溶岩洞の天窓とみられる縦穴が発見されている。

パヴォニス山の斜面で見つかったこの天窓の直径は35メートルで、洞窟の深さはおよそ28メートルと推定されている。

Pavonis_Mon_.jpg

NASA/JPL-Caltech/Arizona State University

溶岩洞には地球外生命体が存在するかもしれない......

米アリゾナ大学月惑星研究所(LPL)が数値標高モデル(DEM)を用いて分析したところ、岩屑が少なくとも高さ62メートルにわたって堆積していることから、溶岩洞の深さはかつて90メートルに及んだと見られている。これは、地球の溶岩洞よりもはるかに大きい。

matuoka_A01.ca.jpg

NASA/JPL/University of Arizona


火星で発見されたこの巨大な溶岩洞は、火星に地表の過酷な環境から逃れうる場所があることを示唆している。

溶岩洞には地球外生命体が存在するかもしれない。また、宇宙船やロボット、さらには有人の火星探査の場所としても有望視されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ショルツ独首相、2期目出馬へ ピストリウス国防相が

ワールド

米共和強硬派ゲーツ氏、司法長官の指名辞退 買春疑惑

ビジネス

車載電池のスウェーデン・ノースボルト、米で破産申請

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中