最新記事

感染症対策

世界をよそに中国は新型コロナウイルス抑え込み 湖北省は初めて1桁に、当局「ピーク越えた」

2020年3月12日(木)18時05分

中国国家衛生健康委員会は、湖北省で11日に新たに確認された新型コロナウイルスの感染者が8人だったと発表した。写真は北京で11日撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

中国国家衛生健康委員会は12日、湖北省で11日に新たに確認された新型コロナウイルスの感染者が8人だったと発表した。流行の中心地である同省で1日当たりの新規感染者が1桁になったのは初めて。地元当局が厳格な封じ込め措置を慎重に緩和する中、企業は徐々に業務を再開している。

中国国家衛生健康委員会の米鋒報道官は12日の記者会見で、国内の新型コロナウイルス流行のピークは過ぎたと表明。「大まかに言えば、中国にとって流行のピークは過ぎた」と述べ、「新規感染者の伸びは縮小している」と説明した。

新たな感染者8人は全員、湖北省の省都である武漢で確認された。

中国での新型コロナ感染拡大ペースはこの7日間で著しく減速。武漢の事実上の封鎖を含め、人の移動や交通を制限する厳しい措置を数週間にわたり講じた結果だ。

湖北省以外の中国本土では海外からの入国者6人を含め、7人の新規感染者が確認された。

海外からの入国者6人の感染が確認された地域の内訳は、広東省が3人、甘粛省が2人、河南省が1人。

中国全体では11日に計15人の新規感染者が確認されたことになり、前日の24人から減少した。

これで中国本土の感染者数は累計で8万0793人。10日時点で、6万2793人が回復したり、退院したりしている。

11日時点で、中国本土での死者数は累計で3169人に達し、前日から11人増えた。このうち10人は、武漢の7人を含め湖北省が占めた。

中国は新型コロナ感染ペースの減速を受け、工場や企業の操業再開に軸足を移しつつある。

2月は工場の稼働率が過去最悪の水準まで落ち込んでいたが、当局による制限が緩和され、ここ数週間に操業を再開する企業が増えている。ただ、完全復旧は4月までかかるとアナリストらはみている。

ここ数週間で特に打撃が大きかったのは航空業界で、2月に各社合計で約209億6000万人民元の収入が失われ、旅客数は前年同月比で84.5%落ち込んだ。

中国共産党機関紙の人民日報は論説記事の中で、中国での新規感染者数は減少しているものの、状況は依然困難であり、さらなる感染拡大リスクがあると警告した。

中国政府系の英字紙チャイナ・デーリーは論説記事で、多くの企業は依然として労働力不足やサプライチェーンの混乱に直面していると指摘。「流行防止措置はサービスセクターの中小企業を中心とする企業に多大な負担となっている」とした上で、「通常業務への復帰のさらなる遅れは破産や雇用喪失の拡大を伴うことになり、社会の安定を脅かす」と訴えた。

湖北省政府は11日、武漢市の基幹産業の操業再開を認めると発表した。12日には、省内の一部地域で鉱工業生産の再開を認めるとともに移動制限を緩和する方針だ。

[北京/上海 12日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・一斉休校でわかった日本人のレベルの低さ
・豪でトイレットペーパーめぐって乱闘 英・独のスーパーは個数制限で買い占め防止
・スペイン、首都マドリードで新型コロナウイルス患者急増 保健当局「医療対応に限界」


20200317issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月17日号(3月10日発売)は「感染症 vs 人類」特集。ペスト、スペイン風邪、エボラ出血熱......。「見えない敵」との戦いの歴史に学ぶ新型コロナウイルスへの対処法。世界は、日本は、いま何をすべきか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中