新型コロナと経済危機「アメリカはヨーロッパも救え」
I Am in Italy Amid the Coronavirus Crisis. America Must Act Now—And Act Big
ミラノが封鎖されて3日目の3月12日、観光名所ドゥオーモ(大聖堂)前も閑散 Flavio Lo Scalzo-REUTERS
<元米下院議長で2012年大統領選では共和党候補を目指したN・ギングリッチがコロナ禍のイタリアから説く欧州の危機と、アメリカがやるべきこと>
新型コロナウイルスの感染拡大は、公衆衛生 と経済という2つの面で脅威をもたらしている。
私は今、在バチカン米大使を務める妻のカリスタとともにイタリアに暮らしている。
だからイタリア政府が断固たる措置で感染拡大を食い止めようとしてきたのも目の当たりにしている。経済に大きな打撃をもたらす措置であろうともだ。
イタリア全土ですべての学校が休校となった。すべての教会が閉鎖された(バチカンのサンピエトロ大聖堂もだ)。すべての結婚式と葬式も延期された。すべてのレストランが休業となった。食料雑貨店と薬局以外のすべての商店も休業中だ。
特定の工場の従業員を除き、国民は在宅勤務を要請されている。街にはほとんど人影がない。
こうした措置を過剰反応と言うのは間違いだ。イタリア北部では、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況だ。
最も状況が深刻なのはミラノがあるロンバルディア州で、患者の急増により医療システムへの負担があまりに大きくなっている。ミラノやブレスチアでは病院に患者があふれ、広場に急ごしらえの「病院」が登場した。
人工呼吸器や集中治療室を必要とする患者が事前予想を上回り、医師は一種のトリアージ的な思考を余儀なくされている。最も感染が深刻な地域では医療機器の不足から、医師らが生存の可能性が高いと思われる患者を選んで人工呼吸器を使わせているとの報道もある。高齢だったり他にも病気がある患者は、治療対象にならないかも知れないのだ。
<参考記事>株価暴落「コロナ相場」の裏で起きている、もっと深刻な構造変化とは
イタリアの教訓をアメリカに生かせ
移動規制の影響ははっきりしている上に持続的だ。首都ローマそして第2の都市ミラノでは、第2空港が閉鎖された。メインの空港でも便数は大幅減で、飛んでもほとんど空席という便が多い。
12日にアメリカからローマへの直行便で到着した旅客数は158人だ。観光業はイタリア経済の柱の1つで、昨年、ローマを訪れた観光客は1520万人に上る。コロッセオ(円形闘技場)だけでも1日平均2万1000人が訪れるが、今はそのコロッセオも休業中だ。
アメリカが死者も経済損失も最低限に抑えて今回のパンデミックを乗り切りたいと思うなら、イタリアの教訓は大いに参考になるはずだ。
新型コロナウイルスの大規模な感染拡大が起こることが明らかになってすぐにドナルド・トランプ大統領が中国からの渡航者の入国を制限したのは正しかった。おかげでアメリカ人の生命が救われるとともに、迎撃態勢を整える時間を稼ぐことができた。
アメリカとイタリアの死者数の違いを見ても、アメリカにおける被害がいかに軽く、事態の進行がいかにゆっくりかが分かるだろう。今後は封鎖や休業といった措置を厳格に行うべき段階になるだろう。
<参考記事>日本が新型肺炎に強かった理由