トランプ新和平案が浮き彫りにした中東の地殻変動
THE PARADIGM SHIFT ON PALESTINE
エジプト外務省は双方に和平案を「慎重に検討する」よう求めつつ、占領地域に独立した主権国家を造ることはパレスチナ人の「正当な権利」を回復することだと主張した。チュニジアの大統領は和平案を「世紀の不正」と非難したが、同国の国連大使は安全保障理事会で非難決議案の作成を主導したとして、すぐに失脚させられた。
アラブ世界だけではない。EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(スペイン)は和平案への非難決議を主導しようとしたが、一部のEU加盟国に妨害され頓挫。ボレルは異例の非難声明を出した。
イギリス政府は、和平案を「重要」で「前向きな前進」と称賛。ロシアは「国連決議と矛盾する」と非難しているが、この和平案で大国が小国を意のままにできるという前例ができれば利益を得る立場にある。クリミア半島は「ロシアの西岸地区」だ。
イスラエルが西岸地区を併合すれば、中東和平プロセスにパラダイムシフトが起こるだろう。そうなれば、パレスチナ人は服従するか闘うかしかない。だが反イスラエル闘争が再び起きても、結果は悲惨なものになるだけだろう。
地域紛争の解決に今も絶大な力を持つアメリカを無視するのは、パレスチナ問題の解決策として間違いということだ。
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