コービーが生前に語った人生の喜び、ビジネスへのこだわり、そして家族への愛
Life and Business According to Kobe
心の声について
自分自身と話し合って納得する――この精神面が大事なんだ。どういう意味かって? 競争を強いられたり期限が迫ったりすると、頭の中であれこれ考えてしまうはずだ。なかなか気持ちが固まらないとしたら、何が起こるだろう?
逃げろという自分の声が聞こえてきやしないか? 「やらなくても別にどうってことはないさ」「今日も早起きして走る必要があるのか? いや、それで未来に支障が出るはずはない」と。
こうした自分との会話で大切なのは、やらなくても構わないという誘惑の声に勝てるかどうかだ。そこが勝負。偉大なことのできる人間とできない人間、たとえできたとしても長続きしない人間の違いはそこで生まれる。
私のバスケットチームの話をしよう(コービーは次女ジアナのチームのコーチを務めていた)。例えば少女たちがトレーニングをしていると、「頑張れ、やれるぞ、食い付いていけ!」と激励する親が必ずいる。そういう親には、練習中は静かにしてくれと注意している。
なぜなら、子供たちの頭の中で会話が行われているからだ。自分に語り掛け、自分を励まそうとしている。そういうときに外部の人間が声をかけてあれこれ指図し、押し付けるのは邪魔でしかない。
子供には自分で考えさせなければならない。これから生きていく上で、親がいつも一緒にいられるとは限らない。自分で道を探し、自分で進むことが大切だ。
失敗してもいい
ミスは誰も望まないけれど、避けられないものだ。別にいいじゃないか。みんな似たような失敗をする。オプラ(・ウィンフリー)も自分の制作会社を立ち上げた時期には、たくさん失敗をやらかしたと言っていた。それは私がやった失敗と同じものなんだ。
故ウォルト・ディズニーがディズニー・スタジオを設立したときには初めから何もかもが完璧で、世間はディズニーが全て正しい判断を行ったと考えがちだ。実際はひどい契約をいくつもして、おかげでずいぶん資金繰りに苦労したという。それでも現在の成功があるんだ。
なぜ判断を誤ってしまったのか、その原因は何だったのかという思いは、後になって初めて生まれてくる。そこから学んで、次はうまくいくよう努力するしかない。前に進むしかない。終わったことは終わったことだ。