与党CDUの迷走でドイツの未来は予測不能──埋められないメルケルの穴
GERMANY’S CRISIS OF THE RIGHT
メルケルは2015年のシリア内戦で、難民100万人を受け入れたことで批判を受けた。だが、今でも人気は高く、ドイツの「舵取り役」として、EUの「良識の代弁者」として、国内外で尊敬を集めている。それでもAKKに党首を引き継いでからは国内政治の舞台からは身を引いていたが、今となってはそれが裏目に出た。後継者選びの失敗で、メルケルの求心力低下は避けられない情勢だ。
ドイツは岐路に立っている。昨年のGDP成長率はわずか0.6%。技術力と生産性の高さでは定評があるが、デジタル化と自動車などの電動化では出遅れた。気候変動対策でも先が見えない。次期政権は経済の活性化とデジタル化、AI活用を進めつつ、2050年までに温室効果ガスの排出を実質的にゼロにするという目標の実現に取り組まなければならない。そのためには、まずCDUが指導力を回復する必要がある。政治の停滞が長引けば、ドイツだけでなく欧州全体が深く傷つくことになる。
<本誌2020年2月25日号掲載>
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