最新記事

中国

習近平国賓訪日への忖度が招いた日本の「水際失敗」

2020年2月20日(木)13時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

たとえば2月7日、自民党の二階幹事長が公明党の斎藤幹事長と共に東京にある中国大使館を訪れ、中国に新型肺炎への対応に関して(経費的などの)支援を申し出ただけでなく、中国が新型肺炎と実によく闘っていると、WHOのテドロス事務局長並みに習近平を褒めそやした。 そのため、中国の中央テレビ局CCTVでは連日このニュースをくり返し報道した。特に二階幹事長が孔鉉佑・駐日中国特命全権大使に「隣国であるだけに、隣の家で何か起こったのと同じことだ」と言ったその場面をクローズアップしていた。

ジャーナリストの田原総一朗氏は、以前からその二階氏に、習近平の国賓来日を含め、中国と仲良くした方がいいと盛んに勧めたと筆者との対談で仰っていたが(『激論!遠藤vs.田原 日中と習近平国賓』に所収)、中国はこういった親中派を育てることには非常に長けている。

二階氏の中国絶賛という一連の流れの中で、中国政府は2月15日、王毅外相にドイツのミュンヘンで開催された第56回ミュンヘン安全保障会議において茂木外相と会談させ、習近平の国賓としての4月来日に関して「これまで通り実行する」意思確認を行わせている。

2月16日付のコラム<習近平「1月7日に感染対策指示」は虚偽か>に書いたように、2月15日はまさに習近平が「私は1月7日から新型コロナウイルス肺炎に関して注意を喚起していた」という趣旨の主張を中国共産党中央委員会の機関誌『求是』に載せた日だ。国内において不満を爆発させようとしている人民を説得するため「私はチャンとやっている」という虚偽の主張をし、海外においてはG7の一国である日本が、「中国は防疫活動をよくやっていると高く評価している」と、中国人民に宣伝するための材料を用意しているわけだ。

もっとも、中国では予定通り4月に習近平が国賓として訪日するということは報道していない。そうでなくとも1月20日に新型肺炎に関する重要指示を出しておきながら、習近平自身は外遊(ミャンマー)や雲南の春節祭りに参加していたのだから、罹患者数が7万を超えている現状で、まさか又もや外遊などと言えるはずがない。

しかし、訪日した後は、訪日で天皇陛下に拝謁することを以て、新型肺炎を世界に蔓延させた大罪人としての免罪符を得ようとしているのである。

そのような大罪人を、いかなる理由があって国賓として日本に招かなければならないのか、安倍首相は国民に説明すべきだろう。習近平国賓招待を実現させようとする安倍首相の習近平への忖度が日本国内での感染を拡大させていることは否定しがたいのだから。

日本国民の命と健康の安全を犠牲にしてまで、習近平を国賓として招かなければならない必要性がどこにあるのだろうか。犠牲になるのは命や健康だけでなく、不安で社会生活がまともに出来ず、日本経済にも大きな影を落としている。どれだけ大きな損害を日本国民に与えているか計り知れない。

日本国憲法の制限というが

そのような中、現行の日本国憲法に「緊急事態対処条項」が入っていないので、アメリカのように中国からの渡航者を、暫時とはいえ、全員入国拒否にするということは日本ではできないのだという指摘も見られる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

比大統領「犯罪計画見過ごせず」、当局が脅迫で副大統

ワールド

イスラエル指導者に死刑判決を、逮捕状では不十分とイ

ワールド

アダニ問題が印政界に波及、野党が審議求め議会空転

ビジネス

村田製が新中計、27年度売上収益2兆円 AI拡大で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中