最新記事

感染症

クルーズ船内「悲惨な状態」 神戸大・岩田健太郎教授、厚労省を告発

2020年2月19日(水)17時35分

新型コロナウイルスの集団感染が発生しているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船した神戸大学医学部の岩田健太郎教授が、感染症対策の専門的な処置が取られていないなどと船内の対応を批判する動画をインターネットに投稿した。写真は船内での検疫作業。REUTERS

新型コロナウイルスの集団感染が発生しているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船した神戸大学医学部の岩田健太郎教授が、感染症対策の専門的な処置が取られていないなどと船内の対応を批判する動画をインターネットに投稿した。

岩田教授の説明によると、18日に厚生労働省関係者の許可を得てDMAT(災害派遣医療チーム)の一員として船内に入った。

岩田教授は、アフリカでエボラ出血熱、中国でSARS(重症急性呼吸器症候群)と向き合ったときにはなかった恐怖を感じたと説明。「アフリカにいても中国にいても怖くなかったが、ダイヤモンド・プリンセスの中はものすごく悲惨な状態で、心の底から怖いと思った」と語った。

ウイルスが存在するエリア、存在しないエリア、不明なエリアを分けて身を守るという感染症への対応では当たり前のことが、船内では行われていなかったという。

また、医療用マスクを着ける乗員もいれば着けない乗員もおり、「熱のある人が自分の部屋から歩いて医務室に行くなどの行為が通常で行われている」と語った。

岩田教授は、感染対策の専門家が常駐していないことを問題視。「ときおり来たとしても何も進言できないし、進言しても聞いてもらえない」とした上で、「やっているのは厚労省の官僚たちで、私も厚労省のトップの人に相談したが、嫌な顔されて聞く耳持つ気はないと(感じた)」と語った。

菅義偉官房長官は19日午前の会見で、動画について聞かれ、「2月5日以降、乗員についてもマスクの着用、手洗い、アルコール消毒などの感染防御策を徹底するとともに、乗員の感染が確認された場合、同室の乗員も自室待機にするなど、感染拡大防止策を徹底して取り組んできている」と述べた。

(久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200218issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月18日号(2月12日発売)は「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集。「起きるべくして起きた」被害拡大を防ぐための「処方箋」は? 悲劇を繰り返す中国共産党、厳戒態勢下にある北京の現状、漢方・ワクチンという「対策」......総力レポート。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カーライルが日本KFCにTOB 1株6500円

ワールド

インドネシア、25年経済成長予測引き下げ 財政赤字

ワールド

中国、4月の豪州産石炭輸入が約4年ぶり高水準

ビジネス

SOMPOHD、発行済み株式の4.04%・770億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中