最新記事

エネルギー

夜間に発電できる「反ソーラーパネル」が考案される

2020年2月18日(火)18時30分
松岡由希子

24時間発電できるようになると期待されている...... abriendomundo-iStock

<カリフォルニア大学デービス校の研究者が、熱放射型光起電力と放射冷却の概念を応用した「夜間光電池」を開発した......>

太陽光発電は、地上に降り注ぐ太陽光を活用した発電手法として広く用いられてきた。世界全体の太陽光発電の導入量は2017年時点で100ギガワット(GW)に達している。

しかし、太陽光発電は、日中しか発電できないというデメリットがある。そこで、太陽光発電とは真逆のアプローチにより、夜間に発電する代替的な発電手法が考案された。

不可視赤外線が宇宙空間に向けて放射されて......

米カリフォルニア大学デービス校(UCD)のジェレミー・マンディ教授らの研究チームは、熱放射型光起電力と放射冷却の概念を応用した「夜間光電池」を開発し、2020年1月15日、アメリカ化学会(ACS)の学術雑誌「ACSフォトニクス」でその研究成果を発表した。

これによると、「夜間光電池」は、夜間に、太陽電池のおよそ4分の1に相当する1平方メートルあたり最大50ワットを発電できるという。

熱エネルギーを電力に変換するためには、物体の温度差が必要だ。太陽電池は温かい太陽光を吸収して発電する一方、「夜間光電池」では、地表の温かい熱と夜間の冷えた宇宙空間との温度差によって、不可視赤外線が宇宙空間に向けて放射され、電流と電圧が太陽電池とは逆方向に流れる仕組みだ。

マンディ教授は「『夜間光電池』には太陽電池と異なる素材を用いる必要があるが、物理学的には、『夜間光電池』も太陽電池も同じ原理だ」と説明している。

昼夜問わず24時間発電できるようになると期待

研究チームによれば、今後の研究によって「夜間光電池」の発電量や効率性を向上させる余地はまだ十分にあるという。「夜間光電池」が実用化されれば、太陽電池と組み合わせることで、昼夜問わず24時間発電できるようになると期待が寄せられている。

夜間の地表と空との温度差を用い、放射される赤外線から発電する試みとしては、米スタンフォード大学の研究チームも、実験装置を開発し、2019年4月、その仕組みをまとめた研究論文をアメリカ物理学協会の学術雑誌「アプライド・フィジックス・レターズ(APL)」で発表している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

加藤財務相、「為替水準の目標」話題にならず 米財務

ワールド

米との鉱物資源協定、週内署名は「絶対ない」=ウクラ

ワールド

ロシア、キーウ攻撃に北朝鮮製ミサイル使用の可能性=

ワールド

トランプ氏「米中が24日朝に会合」、関税巡り 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 5
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 8
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 9
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 10
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中