最新記事

2020米大統領選

ブルームバーグは打倒トランプの救世主か、民主主義を破壊する億万長者か

How the Shadow Candidate May Win

2020年2月19日(水)15時50分
マリー・ハリス(ラジオパーソナリティー)

magw200218_BBG2.jpg

ニューヨークにあるブルームバーグ候補の選挙対策本部では、300人以上が働いている SPENCER PLATT/GETTY IMAGES

──今回の大統領選での戦略も異例だ。みんな緒戦のアイオワ州やニューハンプシャー州で勝って勢いに乗ろうとしているのに、ブルームバーグはこれらの州をパスして、多くの州の予備選が集中する3月3日のスーパーチューズデーに焦点を合わせて資金をつぎ込み、一気に勝負を決めようとしている。あまり民主的なやり方とは思えないが。

でもアイオワとニューハンプシャーの2州だけが候補者選びで特別な意味を持つということ自体、あまり民主的なこととは言えない。この2州は人口的にも地理的にも、アメリカの典型的な州とは言えない。悪いが、どっちの州都も大都市じゃない。これでいいのか、これっておかしくないかと、ブルームバーグは言いたいんだ。

──なるほど。でも、それで勝てると思うか?

可能性はある。とにかく今は、私たちが当たり前だと信じてきた政治の在り方が崩壊している時代だ。だからこそドナルド・トランプが合衆国大統領になっている。弾劾裁判にかけられたが、あっさり無罪になった。

しかし、弾劾にかけられた大統領が選ばれたことは過去に一度もない。20年ほど前のビル・クリントンも無罪になったが、2期務めたので政界を引退した。

──ニューヨーク市長としての3期12年で、確かにブルームバーグはそれなりの実績を残した。歴代の市長が苦慮した問題に立ち向かい、市政をビジネスと見なし、データを駆使して市政の在り方を変えた。ただし、面倒な問題を莫大な私財で解決したこともある。市の予算を大胆に削減したときは、「匿名」の寄付で相殺した。たくさん政治献金をしていたし、政治広告にも巨費を投じている。

ブルームバーグがニューヨーク市長に就任して最初に手掛けた禁煙条例のケースを思い出してほしい。当時は大変な抵抗があり、たばこ業界は巨費を投じて禁煙反対のキャンペーンを張った。でもブルームバーグは、私財を投じてもっと盛大なキャンペーンを張り、抵抗を抑え込んだ。結果、室内禁煙は当たり前になった。

──だが、そこが問題。面倒なことは金で解決するというのがブルームバーグの統治スタイルなのか。

ブルームバーグが今の選挙運動に投じている金額は話題になっているが、市長時代にはもっと多額の金を使っている。面倒な相手に金を渡し、小切手を切り、バミューダにある別荘で接待し、政策を広告で売り込む。それで禁煙条例を通し、公教育の改革も断行した。反対勢力を抑え込むためなら、自分の思うとおりに計画を実行するためなら、相手が欲しがるものを提供するために、ブルームバーグは私財を投じてきた。

金の力で、反対派を黙らせることもできた。すごいことだ。一介の市長ができることじゃない。ブルームバーグにしかできないことだ。

金を渡せば実際に相手を黙らせることができる。そんな日々が続いたら、自分はみんなに支持されていると思ってしまうだろう。実際はそうでなくても。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中