トランプ弾劾で無罪評決、アメリカの民主主義が崩れ落ちる
Protecting Election Integrity
上院で採択にかける法案を決めるのは多数派である共和党のミッチ・マコネル上院院内総務だ。そのデスクは「法案の墓場」として名高い。
不正な大統領選挙を防ぐカギとなるのが、SHIELD(恒久的民主主義のための有害な選挙干渉阻止)法だ。
同法は選挙戦に関する候補者と外国政府の情報交換を禁じ、外国政府などから援助の申し出を受けた際にはFBIと連邦選挙委員会に報告する義務を制定。投票手続きに関する欺瞞的慣行や虚偽情報を禁止し、オンラインの政治的広告に透明性を要求する。
大統領選こそが国民の意思表明
上院情報委員会は昨年、米選挙システムへの侵入や公正性阻害を狙う外国人・外国組織の活動を追った報告書を発表している。同委員会のメンバーは共和党議員であれ民主党議員であれ、SHIELD法を熱烈に支持すべきだ。
同法の採決は迅速に実現しなければならない。無罪評決が出た今、意を強くするトランプがさらなる外国の干渉を求めて裏でどんな行動に出るか、不和のタネをまき、偽情報を促進するために公的プラットフォームで何をするか分かったものではない。
マコネルには、SHIELD法を取り上げるよう迫る必要がある。これは不可能な目標ではない。彼は昨秋、州レベルの選挙制度改革とハッキングなどの不正行為対策のために多額の予算を投じる措置を採決にかけよとの圧力にひそかに屈した。要求より2億ドル少ない規模ではあったものの、同法案が成立したことで各州は計4億2500万ドルの予算を手にした。
マコネルが採決に動いたのは、その不作為に対する非難の声が高まり、彼をロシアの手先とみる「モスクワのミッチ」というあだ名がソーシャルメディアで広まった後だ。この事例はSHIELD法の成立に向けたモデルになる。
こうした事態は有権者の圧力なしでは実現しない。アメリカでは今や、選挙の正当性そのものが危険にさらされている。脅威の源は外国だけでなく、国内にも存在する。自由で公正な選挙は、各州の有権者と全ての上院議員の共通の関心事であるべきだ。さもなければ、この国の民主主義は名ばかりのものになる。
トランプの無罪支持に票を投じた上院議員たちは、大統領選こそが退陣の是非を決める適切な場になると主張した。「国民」には意思を表明する機会が与えられるべきだと彼らは言う。この主張が単なるペテンでないことを、彼らにぜひ証明してもらわなければならない。
選挙制度の公正性を口にするのは、大統領の弾劾裁判のときだけで、それが済んだら選挙制度の公正性のために戦う気などない──そんな上院議員がいるのなら、それは誰か、アメリカの有権者はすぐにでも知る必要がある。
©2020 The Slate Group
<本誌2020年2月18日号掲載>
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