最新記事

アプリ

中国監視網の実力発揮? ウイルス感染者をチェックできる官製アプリにアクセス1億件!

China's Coronavirus App Uses Mass Surveillance to Track Citizen Infections

2020年2月13日(木)16時20分
ジェイソン・マードック

高速道路の料金所で通行人の熱を測る係官(1月24日、湖北省武漢) Martin Pollard-REUTERS

<2週間前まで遡って新型コロナウイルス感染者と濃厚接触があったかどうかをチェックできるアプリには、日ごろから政府や衛生当局、交通機関が集めた個人データが全力投入されている>

中国で、自分が新型コロナウイルスの感染者(または感染が疑われる人)と接触したかどうかをチェックできるスマートフォン向けのアプリが登場した。同ウイルスの感染による死者が1100人を突破するなか、衛生当局が開発したものだ。このアプリを使うと「濃厚接触」があったかどうかを検出することが可能で、2月9日に一般に公開されたと、国営メディアの新華社通信は伝える。

ツイッター上に投稿された同ソフトのスクリーンショットを見ると、検索結果を表示した地図の上に赤い丸印がついている。新型コロナウイルスに感染したか、感染した疑いのある人の位置を示したものだ。

香港紙サウスチャイナ・モーニングポストによれば、市民の個人情報を大量に保持し、日ごろから市民を追跡監視していることで知られる中国当局が、同アプリにデータを提供している。運輸省や鉄道サービス、民用航空局(CAA)や国家衛生健康委員会も同様だ。

フリーダム・ハウスは、2月4日に世界自由度指数を発表。この中で中国について100点満点中11点の低い評価をつけ、政府による監視強化を理由に挙げていた。

電話番号やID番号を登録して検索

各国の政治的自由や人権状況について調査しているNGOによれば、中国の自由度指数は100点満点中11点。2月4日の報告書で中国政府による市民生活の微細にわたる監視を批判している。顔認証機能のついた監視カメラが多くの都市部や公共交通機関に装備され、地方にも展開されつつあるほか、「政府は債務返済能力や債務記録だけでなく、人間関係や公共の場での法令順守度に基づいて個人の信用度をスコア化している。警察は市民のスマートフォンから迅速にデータを抽出・スキャンできる機器を使用している」と指摘した。

技術専門誌MITテクノロジー・レビューが指摘するように、この監視ネットワークが収集する大量のデータがなければ、今回のアプリの提供は不可能だった。

この「接触検出アプリ」を使うためには、決済サービスの支付宝(アリペイ)やスマホ用チャットアプリの微信(WeChat)などの人気アプリでQRコードを読み取り、電話番号や氏名、国のID番号を登録する。登録が終わると、自分が過去に新型ウイルスの感染者または感染疑いのある人と「濃厚接触」したかどうかが確認できる。衛生当局は、「濃厚接触」があったと判明した場合は、家から出ずに地元の救急サービスに連絡を入れるよう指導している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中