首にタイヤ巻き付いたワニ救え! 豪からクロコダイル・ダンディーが参戦
懸賞金かけ、救出作戦挑戦者を公募
2020年1月には地元自然保護局がこのワニの首からタイヤを外す作業をする専門家を公募し始めた。当初はほとんど注目されなかったが同月下旬になって「タイヤを外すことに成功した人には懸賞金がでる」との情報が伝わり、地元や外国メディアも注目する大きなニュースとなった。
ただ、救出作戦には基本的に誰でも応募は可能だったが「危険が伴う作業につき野生動物の救出経験があること、そして野生動物の保護に熱意があり、なによりワニの捕獲に関するプロが対象で素人は対象外」などの厳しい条件がついていた。
また、懸賞金の額は伝えられておらず、資金源も公金ではなく地元自然保護局の局長がポケットマネーから支出するとのことで、金額はさほど高くないだろうと予想された。
こういった条件が影響してか、2月4日の期限までに条件を備えた挑戦者が誰一人として現れなかったことから「懸賞金付きの公募」は終了となり、環境森林省を中心にして今後の対応が改めて練り直す協議が実施されることになっていた。
名乗りを上げたのは豪ナショジオの看板男
そこへ「救世主」のような挑戦者がオーストラリアから現れた。自然科学を取り上げるメディア「ナショナル・ジオグラフィック」オーストラリア版の人気番組「アウトバック・ラングラー」でメインキャストを務めているマシュー・ニコラス・ライト(マット・ライト)氏とクリス・ウィルソン氏の2人だ。共にワニに関する十分な専門知識、経験を有しているという。
ライト氏は自らのインスタグラムに「過去18カ月、このワニの状態と経過について興味をもってみていた。そして是非現地でこのワニを救うという活動をしてみたい」と書きこんでいた。
2人はまず現地パルを訪れて状況視察と関係者との協議を経た後、ジャカルタで環境森林省関係者などとの綿密な協議、調整を重ね、作業に従事する許可などを得て2月11日にパルに戻り本格的な準備に着手した。
12日に民放コンパステレビが現地からの中継で伝えたところによると、2人は現地関係者と協力してプラスチック製の浮き6個を付けた捕獲用のわなとなる鉄製の檻を用意、ワニがよく目撃されるという川の中ほどに設置した。エサはアヒルを用意し、とりあえず15日までタイヤを首に付けたワニがわなにかかるのを待つという。
ライト氏らはコンパステレビに対して「救出作戦がうまく行くよう期待している」と語った。
オーストラリアからの強力な助っ人を得た始まったワニの捕獲、救出作戦。オーストラリアとワニといえば、オーストラリアのジャングルでワニと格闘しながら生きるタフガイを描いたコメディー映画『クロコダイル・ダンディー』シリーズ(1986・1988・2001年)が有名だが、今回の作戦はコメディーで終わらないようにと、関係者は息を飲みながらわなを観察している。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
2020年2月18日号(2月12日発売)は「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集。「起きるべくして起きた」被害拡大を防ぐための「処方箋」は? 悲劇を繰り返す中国共産党、厳戒態勢下にある北京の現状、漢方・ワクチンという「対策」......総力レポート。