最新記事

タイ

タイ銃乱射殺人事件、犯人射殺で終わらなかった 元兵士や警官が模倣犯行予告

2020年2月11日(火)19時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

事件発生後に公表されたジャカパン・トンマ容疑者の手配写真 THAI CRIME SUPPRESSION BUREAU - REUTERS

<死者29人、負傷者58人もの犠牲者を出した事件はタイの抱える闇を浮き彫りにした>

タイ東北部ナコンチャラシマ県ナコンチャラシマ市(別名コラート市)で2月8日午後に発生した陸軍兵士による銃乱射事件(死者29人、負傷者58人)は容疑者の兵士と軍上官との間でサイドビジネスをめぐる問題があり、それが直接の引き金になったとの見方が強まっている。

その一方、今回のショッピングセンターでの銃乱射による無差別殺人事件と同様の事件を予告するような書き込みがSNS上などに相次いでいる。乱射事件の発生を重くみたタイ政府の意向を受け、警察は悪質な便乗犯、愉快犯としてSNSに投稿した者の逮捕に乗り出している。

乱射事件の犯人は陸軍コラート基地所属の特務曹長、ジャカパン・トンマ容疑者(32)で8日午後3時半ごろ、基地内にある上官の住宅などで上官ら3人を射殺。その後、軍車両で映画館などが入った近くのショッピングモールに向かい、途中にある仏教寺院などにも発砲。モールでは一般人に向けて無差別発砲を繰り返し、9日午前9時ごろに治安部隊によって射殺された。

その後の捜査でジャカパン容疑者は軍務とは別に行っていた不動産売買のサイドビジネスで上司と間でトラブルになっていたことが明るみになった。上司の母親の土地売買に関連して受け取る予定だった5万バーツ(約18万円)が支払われないことに怒り上司を殺害したという。

犯行直前にジャカパン容疑者は自らのFacebookに「他人を利用して金持ちになってどうするのか。地獄でお金を使えると思っているのか」などと書きこんでおり、これが上司殺害の直接的動機になったと警察ではみてさらに捜査を続けているという。

タイでは給与水準があまり高くない兵士や警察官がサイドビジネスに携わることは珍しくなく、今回もそうした悪弊が犯行に関係したとみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中