ドイツの民主主義はメルケル後までもたない?
Behold Germany’s Post-Merkel Future and Despair
だがほとんどの場合、左派党が主張するのは急進的な政策ではなく、社会福祉制度の充実や労働組合制度の刷新、1990~2000年代初頭にドイツを揺るがした民営化を巻き戻すことなど、19世紀にSPDが有権者の支持を得て勝ち取った社会保障制度を復活させることだ。
対するAfDの政治家はどうかと言えば、アフリカ人を「その場で」射殺することを提案し、今やドイツには外国人がたくさんいるから「ホロコーストが再び役に立つ」とほのめかし、ヨーロッパのユダヤ人を組織的に殺すことは、ドイツの輝かしい歴史の「クソのような一幕」だと語る。
ドイツ人が左派の過激主義に警戒するのにもいろいろな理由がある。特にチューリンゲン州では、旧東ドイツ秘密警察シュタージによる恐怖の記憶がまだ生々しい。他の左派の指導者と同様、ラメロウに全体主義的な傾向がないか、注意深く観察する必要はある。
だが、証拠もないのにAfDと左派党が何らかの意味で同等だと主張することは、それ自体が過激な考え方で、そんなものに固執するのは、古い政治的コンセンサスに必死にしがみつく人々だけだ。
このような立場は、チューリンゲン州の215万人の住民にとって、これまでうまくいってきた州の政治をわざわざ危険にさらすだけではなく、必然的にAfDを強化することになる。AfDは左派党をより過激に見せることで自分たちの主張を正当化することもできるようになる。
大きく変わるドイツ政界
さらに、極右はそこに生じるイメージのゆがみを利用して、中道の主流政党とメディアは、デマをバラまいていると主張することができる。チューリンゲン州でCDUが左派党と協力することにした場合、AfDは確実に、CDU幹部が最近、ラメロウを過激派よばわりしたことを指摘して、矛盾を非難するだろう。
ドイツの政界が近い将来、大きく変わることは間違いない。メルケルの最後の任期が2021年には終わるというのに、CDUは党の建て直しに苦しんでおり、国の方向性はまだわからない。中道派の指導者たちは近い将来、右と左のどちらに付くかをはっきりさせなくてはならない。
そんな今だからこそ、厳密で正確な情報発信が重要だ。CDUが安易にラメロウを過激派呼ばわりするたびに、すこしずつAfDを助けてきたことに気づかなければならない。
チューリンゲン州議会選挙でAfDが第2党となる得票を獲得したことが、ラメロウの勝利よりも重要だったと大々的に報じたドイツ内外のジャーナリストはすべて、反ファシスト連合の帆から風を抜き、過激な人種差別をあおるAfDの追い風となってしまっているのだ。
(翻訳:村井裕美、栗原紀子)
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