中国経済、新型コロナウイルス感染拡大の影響は想像を上回る
Knock-On Effects of China’s Coronavirus May Be Worse Than Thought
感染の拡大が世界2位の経済大国である中国にとってどれほどの打撃になるのかについて、多くのアナリストが引き合いに出すのが2003年に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)だ。SARSが中国経済の成長率に及ぼした打撃は推定1%以上だった。だが新型コロナウイルスが経済に及ぼす影響はそれよりもっと大きいだろうと予想されている。
その理由は幾つかある。まず、中国経済の規模は当時よりもはるかに大きい。また金融危機以降、エネルギーを大量に消費する製造業や輸出からサービス業や内需へと重心を移したために、中国経済は以前よりも突発的な混乱に弱くなっている。手っ取り早く輸出主導の景気回復を目指すことが以前より難しくなっているのだ。
さらに2019年の中国経済はGDP成長率が前年比約6%増と1990年以降で最も低い水準に終わり、アメリカとの貿易戦争が続いたことで景況感も悪化した。景況感を示すPMI(製造業購買担当者景気指数)は、ウイルスの影響が織り込まれる前の段階で、既に下落の兆候を見せていた。
「つまり中国経済は、SARSの時より弱った状態にある」と、仏銀行ナティクシスのアジア太平洋担当主任エコノミストであるアリシア・ガルシアエレーロは言う。「経済成長のペースは2020年の第1四半期に大幅に落ち込み、その後は徐々に安定していくだろう」
「休業でも給料は払え」?
各地で交通の遮断が長引いていることで、中国では人の移動や職場の人員確保、小規模企業の営業まで様々な混乱が生じている。人員不足に加えて、感染の流行がいつまで続くのか見通しが立たないため、キャッシュフローが滞る企業も出てくる。それでも中国政府は各企業に対し、新型コロナウイルスの影響で休暇が延長となった従業員や、移動制限のために仕事に戻れない従業員については、休んでいる間も給与を支払うようにと通達を出している。
「多くの中小企業にとって、営業の停止や事業所の閉鎖は大きな痛手で」、その影響は第3四半期まで続く可能性があると、英リスク分析会社ベリスク・メープルクロフトの中国専門家である余嘉豪は言う。「ウイルスの流行の影響で、中国の産業の生産サイクルが遅れることになるだろう」
各種工場の閉鎖は海外企業にも混乱をもたらしており、アップルのような巨大企業までもが中国国内での生産を一時的に停止し、オフィスや店舗を閉鎖している。中国のサプライヤーに依存している多くの米企業が、生産や部品調達の困難に直面しており、これによって米企業の中国離れと米中経済の「切り離し」がますます加速することになる可能性もある。