クイーンの現ボーカリスト、アダム・ランバートが70年代に回帰する理由
Turning to Soul
ゲイであることを公表しているランバートは、アルバム収録曲の詞は自分のファンを、そしてLGBTQ(性的少数者)と呼ばれる人たちを応援するものだと言う。「僕の歌で勇気を持ち、強くなってほしい。他の人と違っていたっていいじゃないか、世間の規範にはまらない異質な存在でいいじゃないかって」
今年のアメリカは大統領選の年だが、アルバムに政治的な主張を込めたつもりはないと言う。しかしトランプ政権が軍隊へのトランスジェンダーの入隊を禁止し、公民権法の定める差別禁止の対象に同性愛者は含まれないと論じていることは承知している。「今の政治状況は分断を生み出している。根底にあるのは白人至上主義で、僕ら同性愛者が標的にされている」
それでも民主党の予備選に出馬し、序盤で大健闘しているピート・ブティジェッジ(インディアナ州サウスベンドの前市長)は同性愛を公表している。「誇らしいね」とランバートは言う。
ただし、誰を支持するかはセクシュアリティーではなく政策で決めるという。だから、まだ誰を支持するかは明言しなかった。「好きな候補者は2人いる」が、「大事なのは(本選挙で)トランプに勝てるかどうかだ」とも言う。
今年のランバートは忙しい。『ベルベット』のリリース、ラスベガスでのコンサート、ロンドンのウェンブリー・スタジアム公演を含む欧州各地でのソロツアー、韓国や日本から始まってニュージーランド、オーストラリア、さらにヨーロッパを巡るクイーン+ランバートのラプソディ・ツアーと、休む間がない。
今のランバートは、クイーンの輝かしいレガシーの一部だ。「尽きることがない贈り物だ」と彼は言う。「ブライアンとロジャーは熱いファンにクイーンの音楽を届けなければならない。でもボーカルがいない。その空白を埋められる自分は幸せだ。個人的にずっと尊敬し、憧れていた存在に奉仕し、敬意を表することができるのだから」
ランバートは続けた。「ステージではフレディのことをいつも考えている。同じスピリットで、同じアプローチで歌おうしている。衣装だって、フレディはこれを気に入ってくれるかなと考えている」
つまり、どこかでフレディの霊と触れ合っている?「そうだね、何かが漂ってる感じがする。ステージにいるのは僕らだけじゃないんだ」
<本誌2020年3月3日号掲載>
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