最新記事

台湾

ロックな台湾を熱狂させるロックな政治家、フレディ・リムって誰?

Same Stage, Different Feelings

2020年1月30日(木)13時30分
ビオラ・カン(ジャーナリスト・写真家)

2019年12月に台北市内で開かれた支持者集会兼ライブで歌うフレディ COURTESY OF FREDDY LIM

<台湾で、音楽と政治の融合に取り組む政治家がいる。デスメタルバンド「ソニック」のボーカル、フレディ・リムだ。ロックな台湾で、ロックな議員が語る「政治」とは>

台湾のデスメタルバンド「ソニック」のボーカルであるフレディ・リム(林昶佐〔リン・チャンツオ〕)は台湾の立法委員(国会議員)。ソニックは2003年に台湾のグラミー賞といわれる「金曲奨」で最優秀バンド賞に選ばれ、世界に認められた存在だ。

フレディ自身も立法委員に初当選した16年以降、民間評価団体によって優秀議員に5回選出されている。総統選挙と同じ1月11日に行われた今回の立法委員選挙は、フレディにとって再選を目指す重要な戦いだった。前回は14 年のヒマワリ学生運動から生まれた政党「時代力量」の候補として当選したが、今回は無所属での選挙戦だ。

19年末、フレディは台北中心部の凱達格蘭大道で5万人が集まる支持者集会兼ライブを開いた。バンドのメンバーだけでなく、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と他の選挙区の候補者も登壇した。音楽と政治の融合はフレディの活動テーマでもある。

「政治と音楽はそもそも切り離せない。ロックやヒップホップも政治的テーマから始まった。ヨーロッパで(ライブ形式の政治集会)はよくあることだ」と、フレディは言う。

少年時代にピアノを習い、その後はさまざまな洋楽を聴き育ったフレディがソニックを結成したのは台北大学に在学していた1995年。98年にデビュー曲「深耕」を発表。

日本統治時代の台湾原住民による蜂起「霧社(むしゃ)事件」をテーマにした曲や、太平洋戦争末期に台湾原住民で編成された日本軍部隊「高砂義勇隊」をテーマにした曲をリリースした。47年に国民党政府が台湾民衆を弾圧・虐殺した「2・28事件」をテーマにした曲もある。

政治と音楽が切り離され、有名バンドが政党の応援ステージに立つと非難される日本のような国もある。その日本では若者の政治への関心は薄く、投票率も低い。

一方、政治には多元的な会話や未来への想像力が必要で、政治的要求を伝えるのに芸術や音楽、映画を利用できるし、可能性もたくさんある──というのがフレディの考えだ。彼は政治家になる前から人権活動に熱心で、アムネスティ・インターナショナル台湾支部長を務めたこともある。街頭でチベットやウイグルの解放を訴える活動もしてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ戦争「世界的な紛争」に、ロシア反撃の用意

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中