ロックな台湾を熱狂させるロックな政治家、フレディ・リムって誰?
Same Stage, Different Feelings
2019年12月に台北市内で開かれた支持者集会兼ライブで歌うフレディ COURTESY OF FREDDY LIM
<台湾で、音楽と政治の融合に取り組む政治家がいる。デスメタルバンド「ソニック」のボーカル、フレディ・リムだ。ロックな台湾で、ロックな議員が語る「政治」とは>
台湾のデスメタルバンド「ソニック」のボーカルであるフレディ・リム(林昶佐〔リン・チャンツオ〕)は台湾の立法委員(国会議員)。ソニックは2003年に台湾のグラミー賞といわれる「金曲奨」で最優秀バンド賞に選ばれ、世界に認められた存在だ。
フレディ自身も立法委員に初当選した16年以降、民間評価団体によって優秀議員に5回選出されている。総統選挙と同じ1月11日に行われた今回の立法委員選挙は、フレディにとって再選を目指す重要な戦いだった。前回は14 年のヒマワリ学生運動から生まれた政党「時代力量」の候補として当選したが、今回は無所属での選挙戦だ。
19年末、フレディは台北中心部の凱達格蘭大道で5万人が集まる支持者集会兼ライブを開いた。バンドのメンバーだけでなく、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と他の選挙区の候補者も登壇した。音楽と政治の融合はフレディの活動テーマでもある。
「政治と音楽はそもそも切り離せない。ロックやヒップホップも政治的テーマから始まった。ヨーロッパで(ライブ形式の政治集会)はよくあることだ」と、フレディは言う。
少年時代にピアノを習い、その後はさまざまな洋楽を聴き育ったフレディがソニックを結成したのは台北大学に在学していた1995年。98年にデビュー曲「深耕」を発表。
日本統治時代の台湾原住民による蜂起「霧社(むしゃ)事件」をテーマにした曲や、太平洋戦争末期に台湾原住民で編成された日本軍部隊「高砂義勇隊」をテーマにした曲をリリースした。47年に国民党政府が台湾民衆を弾圧・虐殺した「2・28事件」をテーマにした曲もある。
政治と音楽が切り離され、有名バンドが政党の応援ステージに立つと非難される日本のような国もある。その日本では若者の政治への関心は薄く、投票率も低い。
一方、政治には多元的な会話や未来への想像力が必要で、政治的要求を伝えるのに芸術や音楽、映画を利用できるし、可能性もたくさんある──というのがフレディの考えだ。彼は政治家になる前から人権活動に熱心で、アムネスティ・インターナショナル台湾支部長を務めたこともある。街頭でチベットやウイグルの解放を訴える活動もしてきた。