仮想通貨の扱いが、日米の会計基準で大きく異なるのはなぜか
■クリプト・アセットはUSGAAPでは無形資産として会計処理される
上述のとおり、ガイダンスのQuestion 1は現金で購入したクリプト・アセットをどのように会計処理すればいいかについて回答しています。そこでの結論はビットコイン、ビットコイン・キャッシュ、イーサリアムのようなクリプト・アセットは無形資産として処理すべき、としています。
FASB ASC Master Glossaryにおいて無形資産は次のように定義されています:
"物的な実態の存在しない資産(金融資産除く)"
そして、これらのクリプト・アセットはUSGAAPにおける他の資産の定義に該当しないため無形資産以外の資産として会計処理することは適切でない可能性があるとしています。以下で、クリプト・アセットが他のそれぞれの資産になぜ当てはまらないかを、見ていきます。
現金あるいは現金同等物
クリプト・アセットがリーガル・テンダー(法定通貨)として国家による裏付けがない場合、現金同等物の定義に該当しないとしています。
金融商品あるいは金融資産
クリプト・アセットが現金でなく、法人の持分でなく、現金あるいは他の金融商品を受け取る契約上の権利でない場合は金融商品あるいは金融資産の定義に該当しないとしています。
棚卸資産
クリプト・アセットは通常の営業活動における売却のために保有される場合もありえるが、有形資産ではないため棚卸資産の定義に該当しないとしています。
■USGAAPで無形資産はどのように処理するか
無形資産は耐用年数が確定できる場合はその期間に応じて償却しますが、クリプトの場合は耐用年数が決定できない場合がほとんどです。その場合は非償却無形資産に該当し毎期の償却は行いません。
そしてこれが一番のポイントになりますが、クリプトの時価が値上がりしても時価評価しません。日本の会計基準ではクリプトは基本的に時価評価することになるため大きな違いとなります。
では保有するクリプトの時価が取得原価を下回った場合はどうするか。この場合は減損を検討することになり、基本的には簿価の切り下げを行います。USGAAPでは減損の戻入は認められていないため一度切り下げた簿価は時価が回復しても切り上げることはしません。