中国の肺炎対策は(今のところ)合格点
1月25日の旧正月(春節)前後には数億人が中国内外を移動する(2018年、上海の鉄道駅の様子) Aly Song-REUTERS
<2002年のSARSでは感染拡大を招いたが、中国の保健当局は今回、謎の新型肺炎発生から約1カ月で原因ウイルスを特定し、その遺伝子情報を世界と共有した。これから1カ月は、当局の見立てが正しいかどうかを検証する重要な機会となる>
中国南部でSARS(重症急性呼吸器症候群)が2002年に確認され世界に広がった当初、中国当局はその事実を隠そうとして感染拡大を招いた。
今回は違う。
2019年12月に湖北省武漢市で初の感染例が報告されると、中国の保健当局は約1カ月で原因が新型コロナウイルスであることを特定。その遺伝子配列情報を世界に知らせて、各国が迅速に検査態勢を整えられるようにした。
とりわけこの時期は、インフルエンザなど呼吸器系疾患を引き起こす感染症が流行しやすく、新型コロナウイルスが原因だとすぐに見極めるのは容易ではない。それだけに、遺伝情報を迅速に世界と共有したことは極めて有意義だ。
今回の流行の原因を探る上で最大のヒントとなるのは、初期の感染者が武漢市の海鮮市場(水産物だけでなく生きた動物も扱っている)に出入りしていたことだろう。その全員が12月8日から1月2日までの間に肺炎とみられる症状を訴えた。
ウイルスに接触してから発熱や咳、呼吸が苦しくなるなどの症状が表れるまでの潜伏期間は、まだはっきり分かっていない。1月半ばの段階で死者は2人。ただ、SARSのときは世界で1700人を超える医療従事者が感染したのに対して、今回の新型コロナウイルスにさらされた可能性のある医療従事者419人のうち、感染者は今のところゼロだ。
武漢の海鮮市場と新型肺炎の関連が明らかになったのは1月1日。武漢市はその日のうちに市場の閉鎖を決定して、即日実行した。これにより新たな感染者が報告されるペースは大きく下がった。
感染源の動物を探せ
一部の報道のとおり、このウイルスが人から人に容易に感染しないのであれば、武漢市全体に蔓延したり、旅行者を介して世界中で大流行したりするとは考えにくい。1月25日の旧正月(春節)前後には数億人が中国内外を移動する。この1カ月は、その見立てが正しいかを検証する重要な機会になるだろう。
いま急がれているのは、感染源となった動物を特定することだ。これには、1月7日に新型コロナウイルスが分離・同定された後、中国の研究者たちが開発したウイルス検査方法が使われることになるだろう。そして感染源となった動物が分かれば、武漢市をはじめ中国内外の市場で扱われている同じ動物が検査されることになる。