日本と同様の人口減少を迎えるユーロ圏が受け入れるべき「期待しない時代」
Will Eurozone Policymakers Take The Long View?
ユーロ加盟国の生産年齢人口は今後10年、減少傾向に Nevarpp/iStock.
<景気刺激策を続けても人口減少の影響は穴埋めできないという事実>
新しい年の始まり、しかも新たな10年の始まりは、経済政策を長期的な視点から振り返るのに格好のタイミングだ。数十年に1度の金融危機の後遺症にとらわれた2010年代は、金融・財政面の景気刺激策が明らかに正当とされた10年間だった。事実、政府による大規模な財政拡大とそれに続く異例の金融政策は、このグレート・リセッション(大不況)が1930年代の世界恐慌の再来と化すのを防ぐ上で役立ったとの認識が今では一般的だ。
だが、こうした緊急措置を2020年代も継続するのか。継続する場合、どのような長期的影響を予期すべきか。とりわけユーロ圏の政策立案者らに突き付けられているこの問いに答えを出そうとすると、たちまち経済学の限界にぶち当たる。
経済理論と数々の証拠が示唆するように、金融刺激策は短期的には需要増と雇用増につながる。金融市場が混乱している状況では特にそうだ。だが市場が正常に機能している場合の長期的影響については、エコノミストたちの意見は根本的に食い違う。
長引く景気低迷への対策として財政政策を用いた顕著な事例が日本だ。約30年前のバブル崩壊以来、日本政府は巨額の財政出動を続けてきたが、GDP成長率は冴えないまま。国民1人当たりGDPの成長率はずっとましとはいえ、はるかに規模の小さい財政政策を実施する先進国と同程度だ。
日本のGDP成長率と1人当たりGDP成長率における違いは、長期的経済政策の立案に当たって人口動態上の傾向が持つ重要性を浮き彫りにしている。バブル期の日本の生産年齢人口は年に約1%増加していたが、現在では約1%ずつ減少。つまり、生産性を維持しながらも、日本の潜在成長率は約2%減少したと想定できる。
ユーロ圏は今や、日本と同様の傾向にある。ユーロ加盟19カ国の生産年齢人口は今後数十年間、1年当たり約0.4%の減少が予測されており、ユーロ圏もGDP低成長時代に直面する可能性が高い。
人口減少に経済的に有益な意味合いを見いだすのは難しい。政治システムが有権者への経済的利益の分配を中核に据えているとなれば、なおさらだ。ユーロ圏の停滞気味の成長を押し上げる手段として、政治的により好ましく思えるのはインフラ投資の拡大だろう。国債発行増で資金を賄えば、財政的な痛みもない。しかし、インフラ投資を妙薬と見なしてはならないことは、日本を見れば分かる。