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インタビュー「黒船CEO」ゴーンがかつて語った──「異文化の衝突が真の変革を生む」
Imagining Something Better
東京で記者たちの質問に答える日産CEO(当時)のカルロス・ゴーン(02年5月) Eriko Sugita-REUTERS
<レバノンに逃亡中のカルロス・ゴーン元日産会長は、記者会見で日本メディアをほぼ締め出し、日産への敵意を露わにした。そのゴーンはかつて、外国人として日本企業のトップに就任したことをどう捉えていたのか。2002年の本誌の特集「黒船CEO――外国人社長は日本企業をここまで変えた」(02年8月7日号)に収録されたインタビューを再掲載する>
24歳のときに仏ミシュランに入社して以来、日産自動車のカルロス・ゴーン社長はさまざまな文化圏で経営者としてのキャリアを積み重ねてきた。文化を超えた経営やグローバル企業の条件について、ニューズウィーク日本版編集部がゴーンに聞いた。
――新型Zは、日産にとってどんな意味があるのか。
日産の復活を象徴し、日産がめざす未来をイメージさせるものだ。デザイン、品質、環境対応などあらゆる面で、日産の技術力を感じてもらえると思う。
――コストカッターと呼ばれたあなたが、高級スポーツカーのZを復活させたことに驚いた人もいる。
私たちは当初から、リバイバルプランの目的は日産を成長軌道に戻すことだと言ってきた。コストカットは技術開発に投入できる資本を確保し、成長を実現するための手段にすぎない。
――多文化であることは強みだと思うか。
そう思う。
――あなた自身もさまざまな国の文化の中で生きてきた。
人類は歴史の初めから、異なる考えを衝突させ合うことで変革や新たな価値を生み出してきた。それは物理学でも医学でも、ビジネスでも同じだ。文化が交わり、互いの違いを認識することで、より豊かな発想が生まれる。21世紀には、文化を超えた経営が価値あるものになると思う。
――Zの開発にも多文化の力が生かされているのか。
日本とアメリカ、ドイツのデザインセンターが提案したなかからデザインを選び、国境を超えた開発チームを作った。その意味で、この車は異なる文化の衝突が生んだといえる。だからこそ、日本だけでなくヨーロッパやアメリカでも成功を収めると信じている。
――世界共通のビジネスの原則があるとしたら、それは何か。
すべてのビジネスの基本は利益を上げることだ。そのためには顧客の要望に目を向け、社員のやる気を引き出す必要がある。この原則は、アメリカ型とかヨーロッパ型とか、1つの文化でくくれるものではない。
――真のグローバル企業とは。
多文化の経営を実現している企業だと思う。世界的に成功している企業はどこもそうだ。同時に、部門や国境を超えた交流があり、1つの共通した戦略を全員が把握している企業だ。それぞれの地域に根づいたビジネスを展開しているのがグローバル企業だと言う人もいるが、それだけでは十分でない。
――グローバル企業に貢献するためには何が必要か。英語力やMBA(経営学修士号)か。
MBAは必須ではないが、英語力は欠かせない条件となるだろう。戦略実現の最良の方法を見つけるには、偏見や先入観をもたないことも重要だ。それにはまず自分が変わらなくてはならないが、アイデンティティーが脅かされると考えるべきではない。自分のアイデンティティーをしっかりもっていれば、異文化に対応し、会社に貢献する方法も見いだせる。
――日産の社員をどう思うか。
戦略が定まれば、抜群の実行力を発揮する。それが彼らの強さだ。あらゆる面で戦略転換を迫られたので大変だったと思うが、方向が定まった後は素晴らしい実行力をみせてくれた。
――日本企業はもっと外国人社長を迎えるべきだろうか。
外国人であることが解決策ではない。大切なのは、異なるマーケットで幅広い経験を積んだ人材であるかどうかだ。
<2002年8月7日号掲載「黒船CEO――外国人社長は日本企業をここまで変えた」より>
【参考記事】20年前、なぜ日本は「黒船CEO」ゴーンを求めたのか
2020年2月4日号(1月28日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集。声優/和菓子職人/民宿女将/インフルエンサー/茶道家......。日本のカルチャーに惚れ込んだ中国人たちの知られざる物語から、日本と中国を見つめ直す。