温暖化リスク、首都圏浸水の危機シナリオ 荒川氾濫なら被害90兆円規模に
国や都で対策強化、民間との協力も
復旧の成否を握るカギのひとつは、政府と民間企業との協力だ。青柳一郎・内閣府防災担当政策統括官は「経済界とも連携し、サプライチェーンの末端まで対策がとれるようしていきたい」と語る。また環境省でも昨年3月に「民間企業の気候変動適応ガイド」を策定、事業継続に不可欠な取り組みとして供給網確保のチェックリストも盛り込んだ。
国土交通省は、16年に策定した荒川整備計画で「社会経済活動の中枢を担う東京都及び埼玉県を貫流する荒川流域には、人口・資産が高度に集積している」と位置づけ、現状でのダムと調整池に加えてさらに3カ所の調整池を整備する。18年に事業認可がおりたが、完成まで13年間かかる計画だ。
東京都庁の総合防災部では「近年、全国各地で発生している大規模水害等を踏まえ、タイムライン(時系列防災計画)の普及拡大や調節池の加速的な整備など、水害対策の強化も進めている」と明かす。
ただ、こうしたインフラ整備や広域避難計画は短期間での達成を期待しにくい。青柳統括官は「荒川流域の海抜ゼロメートル地帯の広域避難には、受け入れ側の近隣自治体や交通機関との調整に相当な時間がかかる」として、今年度中にとりまとめできるのは避難の基本方針にとどまり、詳細な避難計画のまでは難しいと話す。
数ある懸念のひとつは、今夏に開かれる東京オリンピック・パラリンピックへの影響だ。「五輪が開催される時期は、梅雨前線の到来や台風接近と重なる。政府が対策を講じているのか疑問だ」と関西大学の河田氏は指摘する。
(取材協力:白木真紀 編集:佐々木美和)
[東京 ロイター]
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