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日本を誤導──安倍首相「国賓招聘のため」習主席と会談

2019年12月26日(木)14時10分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

おまけに外務省報道では、「第三市場」というキーワードにさえ触れていない。

三、香港・ウイグルなどの人権問題:外務省報道「7 国際社会の関心事項」

外務省報道の「7」をご覧いただければわかるように、このような「美辞麗句」に等しいような言葉を発しても、習近平は「痛くも痒くもない」。現に安倍首相の言葉に対して習近平は「内政干渉だ」と一蹴している。

したがって、もし本当に安倍首相が一部の日本メディアで報道されているような毅然とした主張をしたのなら、このような国のリーダーである習近平を「国賓として招かない」という行動で、その気概を表現しなければならない。

ところが実際は、「どうか国賓として来日してください」と懇願しているではないか。虚言も「極まれり」と言いたい。

四、「拉致」に等しい「邦人拘束」問題:外務省報告「6 邦人拘束事案」

ここには「安倍総理から,邦人拘束事案について,中国側の速やかな対応を引き続き強く求めた」とのみ書いてあるが、習近平側の反応は一切触れていない。双方がどのような共通認識に至ったかに関して書いてないのである。なぜ書けないかというと、習近平が無視したからだ。その証拠は中国大陸以外の中文報道に数多くあるが、文字数が多すぎるため割愛する。

邦人拘束は、「拉致」に等しい。中国の「司法」という手段を用いた「邦人拉致」だ。

北朝鮮には「拉致問題を解決しろ」と呼びかけ、「中国の協力も得ている」としながら、まさに、その中国によって「日本人が不当に拉致されている」ことに関して、「社交辞令的」に「強く求めた」としただけである。

日本国民はそれでいいのか?

これで納得するのか?

たしかに北海道大学の教授が中国社会科学院に招聘されながら北京で拘束され、そして「交渉の結果」解放されて帰国している。

しかしこれが、いかに「茶番」であり「芝居」であったかは、かつてその中国社会科学院社会学研究所の客員教授を務めていた筆者にとっては、いやというほど分かる。中国社会科学院は研究者を招聘しながら拘束するようなことをできる機関ではないし、その権限も持っていない。権限を持っているのは中国政府だ。中国政府からの「招聘せよ」という命令を受けたら絶対に逆らえないのが中国政府のシンクタンクである中国社会科学院である。したがって、わざと招聘して拘束し、「国賓招聘のための努力をした」という証拠を作り上げるために、意図的に行ったものであることは明らかなのである。

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