最新記事

サッカー

エジルのウイグル弾圧批判が浮き彫りにした、中国とプレミアリーグの関係 

2019年12月18日(水)17時50分
モーゲンスタン陽子

ウイグル弾圧批判のエジルのツイートに波紋が広がっている  Hannah McKay-REUTERS

<サッカー元ドイツ代表メスト・エジル選手が中国政府による新疆ウイグル自治区の処遇に対する批判をSNSに投稿したことを受け、中国や欧州で波紋が広がっている......>

サッカー元ドイツ代表メスト・エジル選手が今月13日、中国政府による新疆ウイグル自治区の処遇に対する批判をSNSに投稿したことを受け、中国や欧州で波紋が広がっている。

エジル選手は現在イングランドのプレミアリーグ、アーセナルに所属しているが、国営の中国中央テレビCCTVは15日、生中継予定だったアーセナル対マンチェスター・シティ戦の放送を中止。続く16日には中国政府が、同選手は「フェイクニュースに欺かれている」と述べた。

一方、アーセナルは同選手の見解は個人的なものとして、無関係を主張。だが、イギリスではアーセナルの態度が疑問視されている。普段はエジル選手に批判的なドイツでさえも、今回は同選手を擁護する声が上がっている。

同じイスラム教徒として

米国務省によると、中国当局は過去2年半、大半がイスラム教徒であるウイグル族を最大200万人拘束したといわれている。ウイグル族への弾圧や収容施設での処遇に対し、自身もイスラム教徒であるエジル選手は個人のツイッターとインスタグラムに窮状を訴えるコメントを投稿。また「多くのイスラム教徒が口を閉ざしている」と批判した。

これを受けCCTVはアーセナル戦の放送を中止、16日には中国外務省の耿爽副報道局長が、同選手は「フェイクニュースに欺かれている」と述べた。また、共産党機関紙系の環球時報は、同選手のことを「混乱していて冷淡」だと報じた。

ドイツ生まれのトルコ系ドイツ人であるエジル選手は、昨年のFIFAワールドカップ後、人種差別を理由にドイツ代表からの引退を表明。「勝てばドイツ人、負ければ外国人」という扱いに対する抗議には、ドイツのみならずヨーロッパ全土で活躍する移民の多くが共感した。

「親友」エルドアン大統領をも批判?

ただしドイツでは、エジル選手の政治的に軽率とも取られかねない行動に対する批判も多かった。W杯直前の5月には、同選手はトルコのエルドアン大統領と一緒に写真に収まったが、写真はその後、トルコ政府によってプロパガンダのように流用された。また、今年6月のエジル選手の結婚式では、同大統領がベストマン(介添人)を務めた。介添人はふつう、新郎の家族や親友などが務めるので、二人が非常に近しい存在であることがうかがえる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪政府、25年度の国債発行予定額引き上げ 予算案受

ビジネス

英FCA、金融機関のリスクテークへの姿勢見直しへ 

ビジネス

訂正企業向けサービス価格、2月は3%上昇 人件費な

ビジネス

英GSK、帯状疱疹ワクチンの認知症リスク低下効果を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 5
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中