最新記事

スコットランド

「スコットランド独立」は得策か

British Election Impact: If UK Leaves Europe Could Scotland Depart UK?

2019年12月17日(火)15時20分
パラシュ・ゴシュ

「EU離脱を止めよう」と書いたサインの前で演説するスコットランド自治政府のスタージョン首相(12月5日) Russell Cheyne-REUTERS

<先の英総選挙で追い風を受けたスコットランド独立派だが、独立後の展望は彼らが信じるほど明るくはない?>

12月12日の英総選挙で躍進したスコットランド民族党(SNP)の二コラ・スタージョン党首が、スコットランド独立の是非を問う2度目の住民投票の実施を要求している。

SNPは今回、スコットランドの全59議席のうち、2017年の総選挙から11議席増の47議席を獲得。スタージョンは、SNPの勝利は住民投票を求める「有権者の新たな、力強い負託」に等しいと主張した。スコットランドでは2014年にも独立の是非を問う住民投票が実施されているが、この時は賛成44.7%、反対55.3%で独立が否決された。

ボリス・ジョンソン英首相は今回の選挙の直後にスタージョンと話をして、2度目の住民投票に反対の旨を改めて主張。ジョンソンの報道官は、次のような声明を発表した。「首相はスコットランドが2度目の住民投票を実施することに今も反対だとはっきり伝え、分断や不安定な状態に逆戻りしたくないと望む多くのスコットランド市民を支持すると表明した。また2014年の住民投票の結果は明白であり、それを尊重すべきだとも述べた」

テリーズ・コフィー労働・年金相も、保守党が政権を執る今後5年間、スコットランドで独立の是非を問う住民投票が行われることはないと明言した。

それでもスタージョンは、スコットランドには2度目の住民投票を実施する権利があると主張しており、近いうちにその認可を英政府に求める準備をするつもりだと語った。

賛成派「独立国家として十分にやっていける」

「12日にSNPに投票した全ての人が独立を支持するとは言わない。だが今回の選挙では、スコットランドは自分たちの未来を選ぶ権利を有するべきであり、私たちが支持しなかった保守党政府に我慢する必要はなく、EU離脱を受け入れる必要もないのだという有権者の強い意思が示された」と彼女は主張した。

実際に保守党は、イングランドではたやすく勝利したものの、スコットランドでは前回2017年の13議席から7議席を減らした(労働党はさらにひどく1議席しか維持できなかった)。

保守党はスコットランドの独立を認めない立場を示しているが、スコットランドでは英政府から解放されたいという声が高まっている。

法学部の学生でジャーナリストのマイケル・グレイは、スコットランドはEU離脱に反対で、2度目の住民投票に向けて機は熟していると言う。

「スコットランドには、独立国として繁栄するのに十分な規模と経済力と知恵がある」と彼はメトロ紙に書いた。「我々には石油や天然ガス、再生可能エネルギーといったエネルギー資源が豊富だ。食品・飲料部門は世界的に成功している。世界有数の大学が幾つもあるし、独立した法体系や大手金融機関もある。観光地としても人気が高い。ひどい政府とEU離脱の恐怖から逃れるために、スコットランドは急いで独立する必要がある」

<参考記事>離脱強硬派ジョンソン勝利でイギリス「連合王国」解体か
<参考記事>本場スコットランドで味わう至高のスコッチ旅

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中