金融情報大手リフィニティブがロイターの香港デモ報道を阻止、8月から200本以上
香港が反政府デモに揺れる今年8月、ロイターは、暴動を鎮めるためにデモ参加者らの要求を一部受け入れたいという林鄭月娥・行政長官の秘密の提案を、中国政府が却下していたと報道した。中国当局が神経をとがらせかねない内容だった。写真は2018年10月、ロンドンで撮影(2019年 ロイター/Russell Boyce)
今年8月、香港が反政府デモに揺れる中、ロイターは、暴動を鎮めるためにデモ参加者らの要求を一部受け入れたいという林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の秘密の提案を、中国政府が却下していたと報道した。中国当局が神経をとがらせかねない内容だった。
記事はデモ参加者らの主張の柱、つまり中国政府が香港の内政に深く干渉しているとの主張を裏付けるものだった。中国の国有紙はこの記事を、「でっちあげ」で「恥ずべき」ものだと非難。記事は間もなく中国本土で読めなくなった。
記事を止めたのは中国政府ではなかった。金融取引・分析プラットフォーム「Eikon」を通じてロイターのニュースを世界中の投資家に配信している金融情報プロバイダー、リフィニティブが削除したのだ。昨年までロイターの親会社、トムソン・ロイターが保有していたリフィニティブは、中国中央政府の圧力によって中国本土で他にも多くの記事を検閲するようになっている。
今年8月以降、リフィニティブが阻止したロイターの配信記事は、香港デモ関連ほか、中国政府に不利な印象を与えかねない記事も含めて、200本を超える。リフィニティブ内部の文書によると、同社はこの夏、検閲を容易にするため自動フィルターシステムを導入した。このシステムでは中国関連記事の一部に「制限付きニュース」という新たなコードも付与している。
その結果、リフィニティブの中国の顧客は、今年屈指の重大事である香港デモに関する記事へのアクセスが制限された。その中には、格付け機関による香港の格付け引き下げに関する記事2本が含まれる。中国のEikonでアクセスできるニュース配信元はロイター以外にも100種類ほどあるが、いずれもこの検閲の影響を受けている。
習近平国家主席の下、中国の検閲はここ数年厳しさを増し、西側企業は中国政府が政治的に危険とみなすニュース、言論、製品を阻止するよう迫られている。リフィニティブの中国での売上高は年間数千万ドル。ロイターが6月、3人の関係筋の話として報じた通り、リフィニティブは今年、当局から中国事業を停止させると脅された後に検閲を始めた。
リフィニティブの他にも、企業は次々と中国の要求をのんでいる。ホテル大手マリオット・インターナショナルは昨年、台湾を中国とは別の国として表記した件を謝罪し、一時的に中国語のウェブサイトを閉鎖した。複数の米航空会社も自社のサイトで台湾を中国の領土外として表記するのをやめた。中国政府は台湾を自国の一部と見なしている。これらの企業は自社の行為を擁護した。