最新記事

米中貿易戦争

米中貿易第1段階合意はトランプの大ウソ、第2段階はない

The Good, the Bad, and the Ugly: Three Takeaways From the Would-Be U.S.-China Trade Deal

2019年12月16日(月)19時10分
キース・ジョンソン

2016年の大統領選中、トランプは中国をサンドバッグにした。貿易慣行の不公正さをあげつらい(なかには正しい指摘もあった)、実際、中国の対米輸出品目のほとんどすべてに追加関税を課した。トランプによれば、対中貿易赤字はアメリカにとって害毒で、中国政府はアメリカから技術を盗んでいる。自分なら、製造業の雇用を中国から奪い返すことができる──だが、今回のミニ合意、少なくとも公にされている合意は、これらの公約を1つも果たしていない。

「トランプは製造業の雇用を約束したが、米中貿易協議では雇用は1つも増えていない」と、シザーズは言う。トランプがあれほど罪悪視したアメリカの対中貿易赤字は、逆に膨らんでいる。ミ二合意がこの赤字をさらに膨らますのか、減らすのか、それはわからない。だが、これまでのところ1つとして選挙公約が叶っていないのは明らかだ。

これらの公約破りは、何より来年の大統領選でトランプの重荷になるだろう。メキシコ国境に壁を築き損ねたことや医療保険の改革ができなかったこと、中東和平を実現できなかったことやイランと核合意の再協議をできなかったことなど、他の数々の虚言より、重い足枷になりかねない。貿易の対中強硬姿勢にかけてははるかにタフな民主党も、この点を攻めてくるだろう。

「この弱腰な合意はトランプにつきまとい、常に彼の公約と対比されることになる」と、シザーズは言う。ただしそれも、トランプが有権者の歓心を買うためにまた土壇場でミニ合意を引っくり返し、対中制裁を倍返しするようなことになれば別だ。そのときは、また一から対中貿易戦争のやり直しだ。

From Foreign Policy Magazine

20191224issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月24日号(12月17日発売)は「首脳の成績表」特集。「ガキ大将」トランプは落第? 安倍外交の得点は? プーチン、文在寅、ボリス・ジョンソン、習近平は?――世界の首脳を査定し、その能力と資質から国際情勢を読み解く特集です。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

EUが中国をWTOに提訴 ブランデーの反ダンピング

ビジネス

トランプ氏、メキシコ・カナダ製品に25%関税表明 

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、前日上昇の反動売り 一時

ビジネス

12月の0.25%利下げ検討「合理的」=米ミネアポ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 3
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 4
    テイラー・スウィフトの脚は、なぜあんなに光ってい…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 7
    日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心...エヌビ…
  • 8
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 9
    またトランプへの過小評価...アメリカ世論調査の解け…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中