米中貿易第1段階合意はトランプの大ウソ、第2段階はない
The Good, the Bad, and the Ugly: Three Takeaways From the Would-Be U.S.-China Trade Deal
2016年の大統領選中、トランプは中国をサンドバッグにした。貿易慣行の不公正さをあげつらい(なかには正しい指摘もあった)、実際、中国の対米輸出品目のほとんどすべてに追加関税を課した。トランプによれば、対中貿易赤字はアメリカにとって害毒で、中国政府はアメリカから技術を盗んでいる。自分なら、製造業の雇用を中国から奪い返すことができる──だが、今回のミニ合意、少なくとも公にされている合意は、これらの公約を1つも果たしていない。
「トランプは製造業の雇用を約束したが、米中貿易協議では雇用は1つも増えていない」と、シザーズは言う。トランプがあれほど罪悪視したアメリカの対中貿易赤字は、逆に膨らんでいる。ミ二合意がこの赤字をさらに膨らますのか、減らすのか、それはわからない。だが、これまでのところ1つとして選挙公約が叶っていないのは明らかだ。
これらの公約破りは、何より来年の大統領選でトランプの重荷になるだろう。メキシコ国境に壁を築き損ねたことや医療保険の改革ができなかったこと、中東和平を実現できなかったことやイランと核合意の再協議をできなかったことなど、他の数々の虚言より、重い足枷になりかねない。貿易の対中強硬姿勢にかけてははるかにタフな民主党も、この点を攻めてくるだろう。
「この弱腰な合意はトランプにつきまとい、常に彼の公約と対比されることになる」と、シザーズは言う。ただしそれも、トランプが有権者の歓心を買うためにまた土壇場でミニ合意を引っくり返し、対中制裁を倍返しするようなことになれば別だ。そのときは、また一から対中貿易戦争のやり直しだ。
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