最新記事

ロスジェネ世代

40代ロスジェネの年収は10年前のバブル世代より50万円も低い

2019年12月25日(水)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

ロスジェネの所得中央値が低いのは、非正規雇用の比率が高いためだろう metamorworks/iStock.

<大学新卒時と就職氷河期が重なったロスジェネ世代では、40代になった現在も多くの人の雇用が不安定なまま>

2019年、令和元年も間もなく終わる。今年の明るいニュースは、ロスジェネを対象にした支援が本格的に始まったことだ。ロスジェネ(失われた世代)とは、学校卒業時が就職氷河期と重なった世代を指す。新卒一括採用の慣行が根強い日本では、後から挽回を図るのが難しく、現在に至るまで雇用が不安定なままの人が数多くいる。

ロスジェネも40代になり、この世代が老後を迎える将来を想定して、政府は危機感を強めている。学校を卒業した時期でここまでの割を食うのは不公平だと、正社員の中途採用の促進など国としても本格的な支援に乗り出すことになった。当該世代に対象を限定した採用試験を行う自治体もあり、口火を切った兵庫県明石市の試験では3人の募集に対し1635人もの応募が殺到した。救済へのニーズがいかに高いかが分かる。

ロスジェネの具体的なイメージは、学校卒業者の進路統計をたどることで得られる。<図1>は、大学卒業者の就職率と不安定進路者数(進学も就職もしない)の推移を描いたものだ。

data191225-chart01.jpg

就職率はバブル期に高かったが、平成不況の深刻化に伴い低下し、今世紀の初頭にボトムになる。2000年春の卒業生では63.7%だった。2004年以降回復し、リーマンショックの時期に下降するものの、その後は上昇を続けて今年春には90.0%でバブル期を超えている。進学でも就職でもない不安定進路者の数は、これとちょうど逆の動きを示している。

平成以降の30年弱の推移だが、時期によってこうも違うものかと驚く。1999~2004年では大卒者の就職率は7割を切り、毎年15万人以上の不安定進路者が出ていた。この時期に卒業した世代がロスジェネということになる。1976~81年に生まれた世代だ。

この6年間の大卒不安定進路者の合計は100万人だが、他の学校卒業者も含めたら300万人は下らないだろう。これだけの人が、40代なった今も不安定な雇用実態にあるとしたら、これは深刻な問題である。支援へのニーズが大きいのも頷ける。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

現代製鉄、米工場建設を積極検討

ビジネス

英財政赤字、12月は市場予想以上に膨らむ 利払い費

ビジネス

トランプ氏の製造業本国回帰戦略、ECB総裁が実効性

ワールド

中国、国有金融機関に年収上限設定 収入半減も=関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 7
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 8
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 9
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 10
    「敵対国」で高まるトランプ人気...まさかの国で「世…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中