「帝王然とした習近平」から「敵失の安倍晋三」まで、アジア首脳の2019年を振り返る
Asia’s Prize Winners From the Year of the Pig
香港のデモをよそに、香港行政長官の林鄭月蛾(キャリー・ラム)とマカオ返還20周年の式典に参加した習近平 Jason Lee-REUTERS
<アジア各国首脳の2019年のパフォーマンスを表彰>
アジアにクリスマスの伝統はないかもしれないが、それはプレゼントを断る理由にはならない。アジア各国が年越しの準備に追われる今だからこそ、2019年の各国首脳のパフォーマンスを振り返ってみよう。
■空気が読めないで賞/ナレンドラ・モディ(インド)
クリスマスを台無しにしたアニメ映画の怪物グリンチさながら、インドのナレンドラ・モディ首相は「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」からの撤退を表明し、野心的な自由貿易圏構想を台無しにした。
年内に妥結にこぎつけようと、他の加盟国が粘り強く交渉を進めるなか、経済の構造改革の困難さにひるんだモディは、自国産業の保護を優先するという安易な道を選んだ。この選択によりRCEPも打撃を受けるが、それ以上にインドが大打撃を受ける。アジア第3位の経済大国は今や15カ国が加盟するRCEPにも、環太平洋の11カ国が加盟する貿易協定TPPにも背を向けて孤立の道を歩もうとしている。
インドが入れば全16カ国だったRCEPは、世界のGDPのおよそ3分の1、世界の人口の半分を占める世界最大の自由貿易圏となるはずだった。同じくアジア諸国の貿易協定であるTPPと競合関係にあるとはいえ、はるかに優れた多国間連携となる可能性を秘めていた。
国内では、ヒンズー至上主義の与党を率いるモディは反イスラム的な市民権法改正を強行。イスラム教徒の激しい反発を招き、宗教対立が激化している。地域経済の起爆剤だったインド経済の急成長にも陰りが見え始め、2020年の見通しは明るくない。
■批判にも動じないで賞/習近平(中国)
香港ではクリスマスにも各地で民主化を求めるデモが行われた。既に半年余り続く抗議デモが経済活動を直撃し、香港は10年振りに景気後退に突入したが、中国の習近平国家主席は市民の声に全く耳を貸そうとしない。「終身主席」を目指しているとも言われる習だが、新疆ウイグル自治区のウイグル人弾圧で国際社会からも激しい批判を浴びている。
成長が失速した中国経済に、米中貿易戦争の影響がボディブローのように効き始めている。民間部門が抱える過剰債務は膨らむ一方で、建設投資は鈍化し、内需も持ち直しそうにない。
だが習はこうした経済状況にも動じる気配を見せていない。米中貿易交渉では大した譲歩をせずに「第1段階」の合意に達し、居丈高なドナルド・トランプ米大統領と動揺しがちな金融市場を一時的にせよなだめることに成功した。
内外の圧力が高まり続けるなかで、習がいつまで帝王然とした不動の姿勢を保てるかはともかく、現時点ではトランプより一枚上手の役者であることは確かだ。